一人暮らし6

前回のブログ、「一人暮らし5」では、隣のNさんのこと、銭湯で会うホモ?のことなどを書きました。今回は、一人前のカイロプラクティックの施術者を目指した、一人暮らしシリーズの最終回です。

最近は隣のNさんとも会わずに済んで、夜中の救急車の騒動も収まり、無事平穏に暮らしていました。少し気になるのは、Nさんの部屋から常に聞こえていた生活音が全くしないのです。私も朝早く仕事に出かけ、夜はカイロプラクティックの学校に行っていたので、帰宅も遅く、ほとんど寝るためにアパートに帰ってくるといった感じでしたので、Nさんともすれ違いになっているのだろうと思いました。

しかし、私が仕事もカイロプラクティックの学校も休みで、一日中部屋にいる時でも、隣からは物音ひとつしないのです。もしかして、Nさん引っ越したのかな?とも思いました。

そんなある日、私が部屋を出たところ、Nさんと、ばったり会ってしまいました。なんだ、引っ越したのではなかったのかと、ちょっと残念でしたが、同時にNさんの無事に安堵している自分もそこにいました。

Nさんは、自分勝手で、我がままで、ちょっと迷惑な存在でしたが、少年の様な純真さを感じさせる部分もあり、生きることに不器用なところと、体の調子が悪いところが不憫に思え、なんか気になる存在でした。

Nさんは、紺の作業服姿で、上機嫌そうに、ニコニコしながら、話しかけてきました。

「いま、JR東日本の、食堂車で使う食材を電車に積み込む仕事をしているんだ」

隣の部屋から物音が聞こえない理由が、これで分かりました。Nさんの話によると、この仕事のため、なかなかこのアパートに帰ってこられなかったのだそうです。Nさんの姿を見て、仕事をすることの尊さに気づかされました。

仕事もなく、部屋でゴロゴロしながら、酒を飲んでいた時のNさんとは、見違えるような輝きを感じたのです。

私自身も、エレベーター、エスカレーターの保守点検の仕事をやめた後、しばらく仕事をしないで失業保険のお世話になっていたことがあります。今思い返すと、この時ほど虚しかったことはありません。世間では、朝から皆忙しく働いているのに、自分だけが社会から取り残されているようで、何もすることが無いということが、こんなにも辛い事とは想像もできませんでした。

よく聞かれる言葉に、「宝くじが当たったら、仕事をやめて悠々自適の生活をするんだ!」などがありますが、ただお金を消費(浪費)するだけの人生からは、真の幸せや満足感、自己有用感、心の安らぎなどは得られないと思います。(そもそも、宝くじが当たった程度のお金では、悠々自適は無理です)

Nさんは、仕事をすることで、お金とともに、価値のある何かを手に入れたのでしょう。彼の笑顔が雄弁にそれを語っていました。

このままNさんが、良い方向へ行ってくれたらと思っていましたが、残念ながら、それも長くは続きませんでした。Nさんは体調を崩し、仕事を辞めてしまったのです。その後は、また元のような生活に戻り、夜中に救急車を頻繁に呼ぶようになったのです。

ある時、外を歩いている私に、Nさんがアパートの窓から言いがかりをつけてきたのです。私には、何のことか全くわからなかったのですが、先を急いでいたので、無視してその場を立ち去りました。

しかし、気になっていたので、帰宅後Nさんに事情を聴くことにしました。

「先程、私に怒鳴っていましたが、何か悪い事でもしましたか?」

Nさん、「ん・・・? 俺は何にも怒鳴っていないよ」

こんな感じで、Nさんには、その時の記憶が全くないというのです。私はこの時、Nさんの異変に気が付きました。Nさんは、以前から肝臓が悪く、肝硬変になっていると言っていました。

それでも酒は止めずに毎日酔っぱらっていたのです。

この日のNさんの顔は明らかにむくんでいたのです。そして、私とのやり取りからも、頭があまり回っていないような感じも受けとりました。見るからに体調が悪い感じです。

数日後、アパートの外階段の踊り場に、Nさんは自分の部屋にあった不用品を全部出していたのです。たぶんまとめて捨てるためだったのでしょう。

さらに数日後の朝、Nさんの部屋のドアを激しくノックしながら、Nさんの名前を叫ぶ女性の声に私は起こされました。私は仕事も休みで、いつもより遅くまで寝ていたのです。

しばらくして、今度は、救急車が到着しました。

「ああ、ダメだ、完全に硬直している!」という声が壁の向こうから聞こえたのです。

私も、何事があったのかと、部屋を飛び出して、隣のNさんの様子を見に行きました。

Nさんが死んでいました。

うつ伏せのまま、畳に血を吐いて死んでいたのです。身体は死後硬直をしていました。流し台には、まな板の上に切りかけた長ネギがそのままになっていました。部屋の中は驚くほどきれいで、無駄なものが何もない状態です。壁には、「守 頑張れ」と書かれた半紙が張ってありました。多分、親族の方が書いたのでしょう。

そこにいた一人の女性が私に話しかけてきました。

「民生委員の者です。お隣の方ですか?」

私、「はいそうです」

「この人に何か悪いことされませんでしたか?」

私、「時々電話を借りに来たくらいです」

こんなやり取りの後は、警察が来るまで、静かにNさんの姿をただ黙って見つめるだけでした。

Nさんには、色々迷惑な思いもしたけれど、死んでしまったその姿を前に、ただこの人が哀れに思えてなりません。この人は、これまで、どんな人生を送ってこられたのかは分かりませんが、この人なりに一生懸命生きてこられたのだと思います。

Nさんの死因は、恐らく肝硬変から来る、食道静脈瘤破裂だと思います。顔がむくんでいたのも、記憶や意識レベルに障害が出ていたのも、肝機能の悪化からだと思います。

Nさんは、不思議と死の数日前に、部屋の中を整理していたのです。Nさん自身も何か思うところがあったのかもしれません。

もし、あの世があるのなら、Nさんには、そちらで幸せになっていてほしいと思います。いろいろな事を教えてくれた、Nさん、ありがとうございます。

ご冥福を心からお祈り申し上げます。

一人前のカイロプラクティックの施術者を目指し、一人暮らしを始めて2年間の間に、実に貴重な、様々な経験をさせていただきました。この後も様々な逆境、試練、困難に出会いますが、また何かの折に、それらについて書けたらと思っております。

一人暮らしシリーズ 完

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