治療技術の基礎

私が治療師の業界に入った当時は、どこかの治療院に弟子入りして、お世話になりながら治療技術やその他の関連する業務を覚えるというのが当たり前でした。いわゆる、徒弟制度というものです。

さすがに今の時代では丁稚奉公というものはありませんでしたが、それに近い体系はありました。

私も、何件かの治療院にお世話になり、徒弟制度の中で学ばせていただきました。この様な制度が当たり前の世代である私は古い世代になったようで、今の時代には徒弟制度はそぐわないという風潮が主流になっているようです。

徒弟制度や丁稚奉公と、昨今話題になっているブラック企業を、同列に扱っているものもありますが、私はそれは違うと思います。

ブラック企業は、従業員をボロボロになるまで働かせるだけで、そこで仕事の能力を磨いて将来は独立することができるという様な希望が全くありません。

しかし、徒弟制度や丁稚奉公というのは、頑張って努力精進すれば、将来は独立することも夢ではないという希望があります。

治療業界の様に、職人技の世界では、その技術の伝承や習得には、徒弟制度という形態が合っていると思います。治療の業界以外でも、落語や歌舞伎の世界でもそうですし、大工や左官などの職人も徒弟制度の中で、技術を習得していきます。

接骨院・整骨院

しかし、今は芸能界でも芸のない芸人が増えて、ポッと出てきてすぐに消えていきます。治療の業界でも、特に柔道整復師などは最近は全く修業もしないで、学校を出たらすぐに「接骨院」や「整骨院」を開業する先生もいます。

これは柔道整復師は、保険で施術が行えるという特権が与えられていますので、安易にその制度に乗っかって開業できてしまうという理由もあります。ある意味開業資金さえあれば、すぐにせ「接骨院」「整骨院」が開業できるのです。

我々臨床家からすると、修業を通して生きた技術を学んでいないで、人様の体を施術させていただくことは、とても危険でありますし、患者様に対して失礼だと思います。

ただし、ここで重要なことは、良い師匠に出会えるかということです。ここで言う良き師とは、生き方を教えてくれる師のことです。よく言う例えに、「10年悪い師に仕えるよりも、10年かけて良い師を探しなさい」というものです。

確かに、職人として将来生きていくためには、全人格的成長が必要になるため、良き師に出会えるか否かは、大変重要なこととなります。

こればかりは、運というか、ご縁というか、自分ではどうしようもない要素もあるかもしれませんが、それでも志をもって歩み続ければ、きっとそのような良き師に出会うことができると信じています。

教育者の森 信三先生は、以下のような言葉を残しています。

人間は一生のうち 逢うべき人には必ず逢える。 しかも一瞬早過ぎず、 一瞬遅すぎない時に。

森先生の言葉を借りれば、会うべき師には必ず会えるということになります。そのためにも自分を高め、良き師を求めることが肝要かと思います。

徒弟制度には、複雑な技術の習得や、師と仰ぐ人物からその生きざまを直接学ぶことができるという良さもありますが、師弟関係は上下関係なので、主従の関係であり、封建的な側面も持っていますので、当然として負の部分も現れやすいと思います。

石の上にも三年といいますが、大体どこの治療院でも慣例として、3年が最低の修行期間となっています。3年の根拠には、それなりの技術を習得するには、最低でも3年位はかかるということですが、これは雇い主側の理論でもあります。

雇い主は、一度雇った弟子が早く辞めてしまったのでは、いろいろと困るので、技を教えるのにも小出しにしていく傾向があるのです。もっと酷いケースでは、全く教えもしないで、「技は見て盗め」と言わんばかりの先生もいます。

私の先輩の柔道整復師から聞いた話ですが、昔の接骨院では、脱臼の患者が来たら、院長がその技術を盗まれたくないため、弟子にタバコを買いに行かせたそうです。その反面、住み込みで働いているため、直接的には治療と関係がない炊事、洗濯、掃除や、院長の車の洗車までさせられたりと何でもしなくてはいけなかったそうです。

殴る蹴るは当たり前の先生もいますし、勤務時間に対しても労働基準法なんて概念は全く存在しないのが当たり前でした。

今の世の中の尺度で考えれば、不条理極まりないものですが、昔は当たり前のことでした。長時間労働や暴力的指導を擁護するつもりはありませんし、あってはならないことだと思いますが、この厳しさは、後の開業に向けて自分を育てる為の大きな力にもなるのです。

徒弟制度の功罪を考える時に、確かに負の側面もありますが、良いこともありますし、このシステム自体はうまく機能すれば、大変良いものだと思います。ある程度の年数をかけて、あえて厳しい環境に自分を置くことはとても大切です。

味噌づくりをしたことのある方ならわかると思いますが、一年寝かせた味噌と、三年間寝かせた味噌とでは、その味わいや風味がまるで違うのです。

人間も同じで、治療の修行も短期養成コースなどですぐに開業してしまう先生と、何年も下積みを重ねてきた先生とでは、治療技術もさることながら、その醸し出す人間力が全く違うのです。

治療技術の習得には時間がかかる

カイロプラクティックオステオパシーの臨床に携わって30年くらいになりますが私の治療家の経験から言えることは、一つ治療技術を本当の意味で自分のものとして習得するためにはやはり最低3~5年はかかると思います。

どのテクニックも初めの1~2年はある意味で借り物です。だからといってこの状態で実際の肩こり腰痛坐骨神経痛ぎっくり腰に対応できないかといえば、そんなことはありませんが、技の精度や対応幅が違ってくるのです。

また、先程、一見治療とは関係のない雑事をさせられるということも書きましたが、これとて自分が独立開業をしたら、全部自分でやらなくてはいけない事ばかりなのです。

そういった意味では、OJT(On-the-Job Training、オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の観点からも、徒弟制度は優れた制度だと思います。

独立開業している先生方ならこの意味がたぶんわかると思います。確かに徒弟制度における修業時代の辛さや苦しさは大変なものです。

しかし、独立開業したらもっと辛い事が待っているのです。独立開業ということは、治療家として施術だけをしていればよいのではなく、経営者としての学びや実践も必要になってきます。

弟子時代の様に叱り飛ばしてくれる人もいないので、よほど自分に厳しくないと、ついつい怠惰な方に流されてしまいます。その結果の責任は全て自分が取らなくてはなりません。

独立開業してからの苦しさを考えたら、修行時代の苦しさなど、まだまだ甘いものです。それを痛いほど分かっている師匠が、弟子を厳しく育てるのには、その様な意味があるのです。だから本音を言えば、治療技術はもとより、身だしなみや挨拶、掃除など様々な面で厳しく鍛えてくれる治療院に弟子入りした方がためになるのです。「鉄は熱いうちに打て」ですからね!

これをブラックだとか、封建的だとか非難する人もいますが、自分が経営者として矢面に立っていない人には、この心境は分からないことだと思います。それ位、経営者とそうでない人とは立場が違うのです。

パナソニックの創業者である松下幸之助は少年時代、大阪の船場などで丁稚奉公をして、火鉢店や自転車店で仕事を手伝っていた時期があります。

本田技研工業の創業者である本田宗一郎は少年時代、東京の自動車修理工場に丁稚奉公として働き、修理技術を磨いていました。

何でも簡単に便利に手に入る時代になりましたが、この徒弟制度がもっと見直されても良いのではないかと思っています。

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