長生学園で教えていただいた仏教聖典

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私が20代の頃、東京の大田区にあります、「あん摩・マッサージ・指圧師」の国家資格が取得できる専門学校にお世話になっておりました。こちらの学校はちょっと変わった学校で、仏教に関係のある専門学校なのです。浄土真宗の一派である「真宗長生派」を名乗り、正式名を「宗教法人 総本山長生寺附属 長生学園」といいます。

週に一回は我々学生もお経を唱えたり、ありがたい説教を聞かさせていただいたりしていました。入学時に購入した教材の中にも、仏教聖典が入っておりこれを題材にした説教もありました。

私もその当時は、仏教のことなど何もわからなかったのですが、何故だか仏教聖典だけはよく読んでいました。その中に以下のような教えが出ており、とても心に残っていましたので掲載いたします。

この宇宙の組み立てはどういうものであるか、この宇宙は永遠のものであるか、やがてなくなるもであるか、この宇宙は限りなく広いものであるか、それとも限りがあるものでるか、社会の組み立てはどういうものであるか、この社会のどういう形が理想的なものであるか、これらの問題がはっきり決まらないうちは、道を修めることはできないというならば、だれも道を修め得ないうちに死が来るであろう。

例えば、人が恐ろしい毒矢に射られたとする。親戚や友人が集まり、急いで医者を呼び毒矢を抜いて、毒の手当をしようとする。

ところがそのとき、その人が、「しばらく矢を抜くのを待て。誰がこの矢を射たのか。それを知りたい。男か、女か、どんな素性のものか。また弓は何であったか。大弓か小弓か、木の弓か竹の弓か、弦(つる)は何であったか、藤弦(ふじつる)か、筋(すじ)か、矢は籐(とう)か葦(あし)か、羽根は何か、それらがすっかりわかるまで矢を抜くのは待て。」と言ったら、どうであろうか。

いうまでもなく、それらのことがわかってしまわないうちに、毒は全身に回って死んでしまうに違いない。この場合にまずしなければならないことは、まず矢を抜き、毒が全身に回らないように手当をすることである。

この宇宙の組み立てがどうであろうと、この社会のどういう形のものが理想的であろうとなかろうと、身に迫ってくる火は避けなくてはならない。

宇宙が永遠であろうとなかろうと、限りがあろうとなかろうと、生と老と病と死、愁(うれ)い、悲しみ、苦しみ、悩みの火は現に人の身の上におし迫っている。人はまず、この迫っているものを払いのけるために、道を修めなければならない。

仏の教えは、説かなければならないことを説き、説く必要のないことを説かない。すなわち、人に、知らなければならないことを知り、断たなければならないものを断ち、修めなければならないものを修め、さとらなければならないものをさとれと教えるのである。
だから、人はまず問題を選ばなければならない。自分にとって何が第一の問題であるか、何が自分にもっともおし迫っているものであるかを知って、自分の心をととのえることから始めなければならない。

仏教聖典より

「この宇宙の組み立てはどういうものであるか・・・これらの問題がはっきり決まらないうちは、道を修めることはできないというならば、だれも道を修め得ないうちに死が来るであろう。」

この様に、あれやこれやと理論、理屈を述べている間に人は確実に歳をとり死んでしまいます。今何が一番大事なのか!何を優先しなくてはいけないのか!何を第一義とするのか! 人生には決断と覚悟を要求されることが多々あります。

自分探しの旅だとか、この学校は自分に合っているのか、この会社、この仕事は自分に向いているのか、この男性または女性は自分にとって生涯の伴侶として相応しいのか、右へ行けばよいのかそれとも左へ行った方がいいのか・・・人の悩みは尽きません。

臨床の現場でも、「この腰痛の原因はなんですか?」「この肩こりの原因は何ですか?」などと質問を受けることがありますが、本当のところはわかりません。それでも施術はしなくてはいけないのです。

腰痛や肩こりの真の原因はわからなくても、いま目の前の患者様が如何にすればバランスが整うのかを主眼として施術を行えば、結果は自ずとついてくるのです。

一番端的な次のような例があります。急性のぎっくり腰で激痛に苦しんでいる患者様を目の前にして、長々とその原因を追究している姿を思い浮かべてください。これほど愚かなことはないと思います。この様な時は、速やかに必要な処置を行い、できるだけ患者様に苦痛を与えないことが肝要です。

私は長生学園の学生としては、決して真面目な優等生ではありませんでしたが、仏教のお話や、この学校の理念である「霊肉救済」には何故か心惹かれるものがありこの方面の事は自分なりに探求していました。

私も優柔不断なところもありますし、理屈っぽいところもあり、判断を決めかねることもあります。こんな愚かな自分ですが、この様な時に先程挙げたお釈迦様の教えが背中を押してくれるような気がしています。

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病は気から

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【ハンス・セリエ】

心身一如と申しますが、我が母校長生学園の古い資料「長生療術講義録」よりその実例をご紹介いたします。文章は昭和27年に出版された当時のまま掲載しています。

『 気から病という諺がありますように、病気(死)であるということを意識しただけで、その精神作用によって遂に死を招来したという、驚くべき実例のあった有名な話があります。

かつてオランダの国に、ブアメードという国事犯があって、その筋の手に捕縛され死刑の宣告を受けました。

この男は壮年で体格強健でありましたが、時の医科大学長がこの犯人によって、観念の肉体に及ぼす影響に就いて試験して見ようと考え、同人を欺いていうのには「君は国事犯で死刑の宣告を受けているから、何れにしても生命はないのであるが、その君の体を我等の学問上の試験に供してもらえないだろうか。

今、学者間に人間の血量に就いて二つの問題がある。英仏の学者は、人間の血量は体重の十分の一であるといい、我が国の学者は十分の一を超えるものと主張している。併しながらこれは一度健康な人から血液を絞り取って、試験してみなければ十分の論証は出来ない。

君は国事犯で、すでに国の為に一命を捨てたものであるから、何とぞ今一歩進んで、直ちに国の為にこの試験の犠牲になってもらいたい。血液は痛くないように絞り取るから決して苦しいことはないが如何であろうか」と言うと、ブアメードはしばらく思案し、ついに決心したと見えて「よろしい、学問の為にこの身を捧げましょう」と答えました。

そこで同人を寝台にのせ目を塞いで見えないようにして足の十指にナイフで傷をつけ、ここから血液を絞り取るからと説明して、同時に傍らに水の容器を用意して、恰も血液が滴り落ちるように水を滴して、一滴一滴足下の器に入る音をさせ、一時間、二時間と次第に滴下した水量計を計って、今は何ポンド溜まった、又何ポンド溜まったと大声に唱えて本人に聞かせ、五時間の後に、十八ポンド溜まった、最早体重の十分の一以上に達した。我が国の学者の説が勝利を得たとして万歳を唱え、本人を検案して見ると全く死んでいたということです。

これはブアメードの身体に何も死ぬ程の傷害も病気もなかったのですが、血液を絞り取られて死ぬものと確信し、本当に血液は滴り落ちている、これで死ぬのだと思った結果、ついに死んだのであります。このように精神作用の身体に及ぼす影響は実に恐るべきものであります。病気が治るのも治らないのも、その人の意志の強弱によることが多いという事が解ることと思われます。』 ( 柴田純宏 講述 、長生療術講義録より)

昔から「病は気から」と言いますが、上の事例もまさに心が病をつくるだけでなく、命までをも左右してしまうということを、その事実をもって証明しています。

ストレス学説を提唱したのは、カナダの内分泌学者、ハンス・セリエ(Hans Selye)です。

ストレスとは、次のように定義されています。

『寒冷・外傷・疾病・精神的緊張などが原因で体内におこる一連の非特異的な防御反応。また、その原因。まず交感神経の緊張、副腎髄質のアドレナリン分泌がおこり、ついで脳下垂体からのACTHの分泌と、それによる副腎皮質ホルモンの分泌増加がおこる』 ~広辞苑より~

※ ACTH・・・副腎皮質刺激ホルモン。下垂体前葉ホルモンの一種。副腎皮質ホルモンの血中濃度が低下すると,下垂体前葉から ACTHが分泌されて副腎皮質を刺激し,皮質ホルモンの分泌を促進する。その結果,全身に一連の反応 (全身適応症候群) が起る。

このストレスは適度にかかるぶんには、心身を健全に成長させてくれますが、過度になると生命にかかわる問題となります。セリエはストレス学説において、「警告期」、「抵抗期」、「疲弊期」の三段階に分けて説明しています。

  1. 警告期・・・軽いストレスがかかった状態で疲労感などを感じるレベル。
  2. 抵抗期・・・ストレスに対抗しようとして頑張って抵抗している状態。
  3. 疲弊期・・・ストレスに負け心身ともに疲れ切った状態。

過度のストレスがかかり続けると、心身ともに疲弊し、最終的には死に至ることもあるのです。警告期の段階でも強烈なストレスがかかると、死に至る場合もあります。

最近では心身相関の考えがだいぶ普及し、ガンやその他の病気でもストレスが関与していることが証明されてきており、「病は気から」が科学的に解明されてきております。

この様に書くと、ストレスは悪者の様に聞こえますが、ストレスとは単なる刺激であり、別な言い方をすれば、逆境、試練、困難、苦難ともいえます。これらが悪いのではなく、これらをどう受け止めるかにかかっていると思います。

例えば、ボクシングでも相手のパンチをまともにもらわない様にディフェンスがあり、柔道にも投げられたときにケガをしない様に受け身があります。

同じように心にも、ディフェンスや受け身が必要だと思います。これによりストレスに負けない自分をつくることができると思います。

究極的には、ストレスは自己の成長にとって必要不可欠なものであり、避けて通れないものですので、これらとどう付き合うかが人生の課題だと思います。

「難事は良いこと!」と受け止められたらいいですね!

戦国時代から安土桃山時代にかけての山陰地方の武将尼子家再興のために「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」と三日月に祈った逸話で有名な、山中鹿之助が、次のような言葉を残しております。

「憂き事のなほこの上に積れかし、限りある身の力ためさん」 

「憂きこと」を避けるのではなく、自分の力を試すために、逆境、試練、困難、苦難よ、ドンと来い!と言い切った山中鹿之助の様な心境になれたら、ストレスに強く生きられると思いますが、皆様いかがでしょうか?

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