ポリベーガル理論の基礎

ポリヴェーガル理論は、イリノイ大学名誉教授のポージェス博士によって提唱された人間の脳と自律神経と心の問題の関係性を示したものです。

ポリベヴェーガル理論( polyvagal theory )の語源は、「多くの」または「複数の」という意味と「迷走神経」を結び付けた理論というこで、自律神経の中でも特に迷走神経についての新しい考え方に注目されています。

ポリヴェーガル理論では、自分が安心できる「安全」な環境にいることが大切とされています。そうでない場合には、自律神経を介した自己防衛反応が起きると述べています。

自律神経・交感神経・副交感神経

自律神経とは、旧来では交感神経と副交感神経がシーソーの様にどちらかが強まればどちらかが弱まると考えられてきました。

例えば、人前でスピーチをしなければいけない時に、緊張してドキドキしますが、これは交感神経が緊張した結果です。

逆に心地よいクラッシック音楽などを聴いてリラックスしている時は、副交感神経が緊張しています。

ポリヴェーガル理論でも、この既存の考えを受け入れていますが、危機に瀕した時には、これとは違う反応をすると述べています。

ポージェス博士は、自律神経には3つの下位システムがあり、それぞれの反応は段階的に働くという階層論が提唱されています。

3つの自律神経とは、以下のものです。

  • 1.有髄(ミエリン鞘のある)の迷走神経
  • 2.交感神経
  • 3.無髄の迷走神経

出典:英語版ウィキペディアのQuasar Jaroszさん [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)]

有髄の迷走神経とは上の図のようにミエリン鞘を持つ神経のことで、脳幹の疑核(ぎかく)を起源とし、心臓や気管支など主に横隔膜の上部を制御しています。進化の中では最も新しい神経ということで、哺乳類特有のものとされています。

次に交感神経は、可動化(動き回ること)と、「闘争/逃走反応」を可能にするため、心臓からの血流量を増加させる働きがあると言われています。進化の過程では、有髄の迷走神経より古いものとされています。進化の過程で活発に動き回る硬骨魚類などにおいて発達したと言われています。

最後に無髄(ミエリン鞘の無い)の迷走神経は脳幹の背側迷走神経運動核から始まり、主に横隔膜から下の内臓を制御するそうです。内臓から脳に戻る求心性繊維は脳幹の孤束核(こそくかく)に終結します。この迷走神経が進化の上では最も古いものとされています。原始的な生物や爬虫類などの特徴的な神経です。

人が危機に瀕した際に、以上のような3つの迷走神経が、一体どのように働くのでしょうか?

①、困難に直面すると、進化の視点から一番新しい有髄の迷走神経が反応!
表情や声を使って安全を確保できるよう交渉を試みる。(社会交流システム)

②、①の反応が上手く行かなかったら、社会交流システムは引っ込み、心拍数の上昇を抑制する有髄迷走神経「ヴェーガルブレーキ」も止まります。
これにより「闘争/逃走反応のため交感神経系を起動!

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しかし、逃げることも、戦うことも出来なかったら反射的にシャットダウン(擬死)が起きる。(太古の神経回路)
カメが首を引っ込めて動かなくなるのもこのような現象の一つです。

この様に、危機的状態に反応するには、段階があると考えられています。第一段階の有髄の迷走神経はそれ以下の交感神経や無髄の迷走神経の働きを抑制する機能を有すると考えられます。

そのため、社会交流システムが上手く行っている場合は、「闘争/逃走」反応やシャットダウンは起きません。

そして、これらのストレスに対し私たちが体験する生理学的な状態は、意識して選択しているのではなく、無意識のレベルで環境を評価しているそうです。この様な環境の中のリスクを反射的に評価する神経系の働きを「ニューロセプション」とポージェス博士は呼んでいます。

人が社会的行動を円滑にとるためには、自律神経系を調整することが出来る最も新しい神経回路(有髄迷走神経)を発動することが必要。この回路は哺乳類固有で、「安全である」と感じている時にだけ稼働するのです。

この最も新しい有髄の迷走神経は、腹側迷走神経複合体として、心臓、気管支、顔と頭の横紋筋を制御している。また、咀嚼、中耳、顔面、咽頭、首の筋肉を制御している三叉神経と顔面神経と関係しているそうです。

この様に、有髄の迷走神経は、顔や頭の筋肉を使った人間の豊かな表情と関連し、中耳筋を使って聞く能力、喉頭、咽頭の筋肉を使って発声する能力などと結びつき、安全で安心な人間関係構築のために役立っているのです。

これらの事から、人と人との良好なつながりには、顔の表情や声の韻律や抑揚が大切になってくることが分かります。

私の個人的な体験ですが、強いストレス下で聴力が低下したことがあります。これなどもストレスと中耳筋との関係の結果だと思います。

人は低い声に恐怖を感じるのは、それが捕食者の唸り声に通ずるからだそうで、中耳筋とよばれる、鼓膜張筋とあぶみ骨筋を調節し、脳に伝わる音を調節して、人の声を機能的に聞き分ける能力を向上させているそうです。

よく声は自信の現れといいますが、自分に自信が無かったり、相手を怖がっていたりすると、低い声で話してしまう人がいます。これは相手に対して警戒し、威嚇して自分を守ろうとした結果だと思います。これでは相手も心を開きませんし、逆に警戒されてしまいます。声って大事ですね!

ポリヴェーガル理論では、再三にわたり、「安全である」ことの重要性を述べています。「健康」「成長」「回復」も安全であると感じることで初めて促進されるそうです。

この書籍に安全と治癒力に対する実験があります。病気を抱えている人の中から、実験参加者を募り、無作為に二つのグループに振り分けました。半分の被験者は温かく迎え入れられ、症状に対し熱心に耳を傾けてもらえました。

もう半分の被験者は、温かみも優しさもない、典型的な現代の医学的処置を受けました。すると、温かみや優しさに触れた被験者の方が、風邪から早く回復したそうです。

私たちは防衛反応に入ると、代謝のための資源を防衛のために使います。脅かされている状態では、創造的になることも、愛することもできないし、治癒することもできないと著者は述べています。

また世界中の宗教にも、それぞれ病への癒しに関する話があります。これなども、もしかしたら、信仰による安心安全から導かれたものなのかもしれません。

人は常に安心安全を求めていますが、この世の中に絶対に安全という場所もないのも事実です。必要なのは自分の心の中をどのようにして安心安全だと思えるように変革していくかです。

人間が、どうやって今ある状況が安全か危険かを判断しているのかは、まだ厳密にはわかっていないと著者は述べています。辺縁系の防衛回路を抑制する、側頭葉を含む高次の脳を使っているのではないか、と考えられているそうです。

とにかくこの安全か、そうでないのかの判断が脳の中で行われ、新しい有髄の迷走神経回路で保護されている間は、私たちは落ち着いていられます。

しかし、一度それが失われると、ポージェス博士がニューロセプションと呼ぶような自動的な危険に対する判断が行われ、自律神経の反応が起き、戦うか・逃げるかの「闘争/逃走反応」が起きたり、自分がなにもできない、動けないと判断して不動状態の「凍りつき反応」に移行することもあるのです。

この様に危険と感じてしまう閾値を上げるための訓練や、良い治療があれば、必要以上に恐怖心を持ってしまうトラウマを持つ方にも、良い影響を与えることが出来るかもしれません。

ただし、ポージェス博士がいう様に、「闘争/逃走反応」や、「凍りつき反応」や「シャットダウン」のような反応は、どれも善悪で語られるものではなく、その時に自分自身を守るベストな反応であったと解釈するべきなのです。

ところでテレビや新聞のニュースのほとんどが、人を不安にさせるネガティブなものばかりです。この様な情報には特に注意が必要です。このようなことが繰り返し続くと自律神経失調症になってしまいます。

ここまで感情と自律神経と内臓との関係をお伝えしましたが、内臓から自律神経を整え感情をコントロールする方法をお伝えさせていただきます。

この本に出てくるマインドフルネスなどもそうですが、今ここに意識をおき、呼吸に集中し、腹式呼吸で肚(内蔵)をよく動かすと、その刺激が脳に伝わり感情にも良い影響を与えると思います。

自分で思うようにコントロールできない自律神経を唯一コントロールする方法が呼吸法だと思います。

それと、人は閑になって時間があると不安な思いやネガティブな感情に襲われます。これを防ぐためには、体を動かすことです。筋トレは最高の精神安定薬にもなるのです。筋トレで筋肉が鍛えられると、姿勢を保持する力も強くなり正しい姿勢になるのです。

「外相整えば内相おのずから整う」といいますが、まさしく姿勢や筋力が良くなると、心も積極的になり、逆に劣化してくると、内面も弱化してしまうのです。心身相関です。

臨床の現場でも、肩こり・首こりを訴え背中が猫背の患者さんが、ネガティブ発言を連発している光景に良く出くわします。

カイロプラクティックオステオパシーなどで、体のバランスが整ってくると気持ちも前向きになり積極的に身体を動かすようになって健康を取り戻す方もいます。肉体のバランスの良さや筋力はこれほど内面への影響が強いのです。

自分で安心安全と思える環境を整え、心も体も整えることが、この世の中を渡っていくために必要な知恵ではないでしょうか。

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