休むことは自分を大切にすること
ストレスに心身が耐え切れなくなると、まず身体がいうことをきかなくなります。疲労は目に見えるものではないし、「疲れた」という実感が必ずしも伴わない疲労もあるのです。
休むことが、いかに難しさを伴う高等技術かを私たちは理解していません。うまく休むための3つのプロセスがあります。
- 休みが必要な状態だと自覚すること。
- 休むことができる環境を確保すること。
- 自分の状態にとって適切な休養活動を選択すること。
人の身体はストレスを誤魔化すようにできている
ストレスがかかっている環境にいるとき、人間の身体はその負荷に抵抗するために、副腎という臓器から「抗ストレスホルモン」と呼ばれる物質を放出させます。有名なアドレナリンはその一種です。
アドレナリンやコルチゾールといった抗ストレスホルモンは、ストレス環境に抵抗するために、血圧や血糖値を上げて、身体を「戦闘モード」にします。いわば、パフォーマンスを高めるための「ドーピング」をするのです。ストレス環境に抵抗するための「ドーピングモード」は概ね3か月続きます。
その間、身体にダメージは蓄積していますが、むしろ心身の調子は上がっていたりします。それに気づかぬまま調子が良いと勘違いして頑張り続けた結果、3か月たって抗ストレスホルモンが枯渇すると、一気に自覚的な疲労感と様々な身体症状が襲ってきます。
慢性頭痛、吐き気、腹痛や便秘などお腹のトラブル、蕁麻疹、や湿疹、脱毛などの皮膚トラブル、不眠などあらゆる症状が出現します。
心身相関
心療内科医師の三木治氏は、最終的に「うつ」と診断された人の6割以上はまず内科にかかっており、初診から精神科や心療内科にかかった人はほんの数%だったと報告しています。
ストレスが蓄積したときに、うつや意欲の低下などの精神的な症状よりも、まずは身体の症状からくるということが知られていないことも、自らの疲労を少なく見積もってしまう大きな原因になっています。
つまり、頭痛や腹痛には「メンタルの疾患」という一面があるのです。日常的に起こる様々な身体の症状が「精神的なダメージのサイン」であることに気づくことが大切です。
腰痛もメンタル疾患の一つ?
心身相関の一例として、腰痛も「精神的要因」があることが知られています。腰痛の危険因子に無理な動作や姿勢の悪さといった物理的要因だけでなく、「仕事に対する満足度が低い」「上司のサポート不足」といった心理的な要因が影響しているのです。
人間には痛みを感じると、「オピオイド」という痛みを抑える物質を分泌して、苦痛を軽減する神経回路があるのです。
しかし、精神的なストレスがかかっていると、この回路がうまく働きません。メンタル症状が悪化しているために、普段は耐えられるようなちょっとした痛みにも過剰に身体が反応してしまうというタイプの「痛みの悪化」があります。腰痛も「メンタル疾患」としての一面があるのです。
以前のブログ「腰痛は怒りである」もご参考にしてください。
気が付かない多様なストレッサーの影響
私たちの心にダメージを与えるものを「心理的ストレッサー」といい、ここでは大きく2つに分けて紹介します。
- ライフイベント・・・人生において大きな変化をもたらす出来事のことで、家族との死別、結婚、離婚、失業、引っ越しなど
- デイリーハッスルズ・・・満員電車や生活騒音、面倒な家事など普段から経験するような日常の些細な出来事のこと。
1950年代アメリカのホームズとラーという研究者が、「ライフイベント法」という画期的な測定法を開発しました。
これは「結婚」というイベントに対するストレス度を「50点」とし、それを基準に0~100点の範囲で、それぞれのイベントをこなすのにどれだけのエネルギーを用いるかを評価するというものです。
ここで注目すべきは、「結婚」「妊娠」「個人の成功」など一般的にポジティブと思われるライフイベントにも高い点数が設定されているということです。ポジティブな変化であっても、「変化とは、おしなべてストレスである」ということなのです。
このライフイベントは連発すると危険ということを覚えておいてください。
中医学と七情
嬉しいこと、楽しいこともストレスになるということは、東洋医学的にも指摘されています。五行色体表からもわかるように、「喜び」は心経との関連が深く、喜び過ぎると心を傷めます。
中医学には「七情(しちじょう)」という考え方があり、七つの感情である「七情」は「怒・喜・思・悲・憂・恐・驚」の7つの感情です。
- 「過怒傷肝」怒り過ぎは肝を傷める
- 「過喜傷心」喜び過ぎは心を傷める
- 「過思傷脾」思いすぎは脾を傷める
- 「過悲憂傷肺」悲しみ、憂い過ぎは肺を傷める
- 「過驚恐傷腎」驚き、恐れ過ぎは腎を傷める
というように、それぞれの感情が五臓に影響し、身体症状として現れることがあります。どの感情も振れ幅が大きすぎると、身体にとっては負荷(ストレス)になるのです。
笑い過ぎて死んだ人
紀元前207年頃、ギリシアのストア派哲学者クリュシッポスは、1匹のロバが自分のイチジクを食べているのを見て笑い出し、ロバにワインを与えてイチジクを飲み込ませるよう奴隷に命じたあと、「笑い過ぎたことで笑い死にしてしまったとされています。
デイリーハッスルズ
ライフイベント以上に気づきにくいストレッサーが、「デイリーハッスルズ」です。これは日常生活で出会うちょっとしたストレッサーのことです。
例えば、「電車で隣に座った人の香水がきつかった」「SNSで不愉快な投稿を見た」「タンスの角に足をぶつけた」「部屋が汚い」などの小さなストレスです。
一つひとつのダメージが小さいからこそ厄介で、自分でも気づかないうちにダメージが蓄積してしまうのです。デイリーハッスルズを提唱している高名なストレス研究者ラザルスは、むしろこう言った誰もが頻繁に経験する些細なデイリーハッスルの積み重ねが心身の健康状態に最も影響するといっています。
対策として何か「もやっとしたもの」を感じたら、いちいちそれを気づいてあげて、記録しておくことをおすすめします。
身体は3か月程度は、ドーピングモードによって、ストレスを誤魔化し、休む必要を感じさせません。ですから、「環境の変化」「プレッシャーからの解放」「デイリーハッスルズ」といった気づきにくいストレッサーがあるということを、あらためて認識してください。
さまざまなストレス反応があることを知ることが「休みが必要な状態だと自覚する」第一のステップなのです。
積小為大
小さなことの積み重ねが、大きなものになるということをあらわした言葉に「積小為大(せきしょういだい)」という言葉があります。
これは、江戸時代後期の農政家、思想家である二宮 尊徳(にのみや そんとく)の教えで、「積小為大」の意味は「小さい事が積み重なって大きな事になる。だから、大きな事を成し遂げよう思うなら、小さい事をおろそかにしてはならない」ということです。
良きことを為すにも小さなことの積み重ねであるように、小さなストレスの積み重ねも大きなダメージになってしまうので注意が必要です。
休む環境を確保するのが難しい
「自分が不調である」ということを第三者に伝えられる人がどれだけいるでしょうか。心配をさせたくない、迷惑をかけたくない、評価を下げたくない、スキを見せたくないといった様々な心理が、「休みたい」と伝えることのへの障壁となります。
この困難に大きく関連する要因として「過剰適応」という概念があります。過剰適応とは、周りの環境に配慮し、他者に調和することを重視しすぎて常に気を張っている状態で、精神的にとても消耗します。
例えば「周りの人からの期待に応えなければという気持ちが強く、自分の限界を超えて頑張ってしまうことがしばしばある」
「本当は休みを取りたいけれど、同僚の目が気になって休みがとりづらい」
「評価が下がるかもしれないといった不安や、休むことに対する罪悪感があって、せっかく休みをとっても気持ちが落ち着かない」
「休みの日も、つい仕事のことを考えてしまう。あるいは疲れていても、家族サービスをしなければと思ったり、友人からの誘いに応じたりしてしまう」
この様な状態が続けば、人は必ず調子を崩すようにできているのです。真面目な人ほど他者のニーズを優先させ、自分を責めやすい。休めない理由で多いのが「他者から期待されている」という思いです。
他者を優先させてばかりだと次第に「自分のニーズ」というものがわからなくなってきます。
人は傷つきの多い環境にいると感情が動かなくなる
傷つきの多い環境にいるとき、人はどうなっていくでしょうか。次第に感情が動かなくなり、生活に生き生きとした現実味が無くなっていきます。あたかも脳に麻酔をかけたように、あらゆる痛みに鈍感になっていくのです。
これは生物が古来より身につけている、逆境に適応するために苦痛をやり過ごしていくための術(すべ)で、この様な適応を「解離」といいます。
このモードに入ると、何が自分に負荷をかけているのかはっきりと把握できなくなり、延々と気力・体力を削がれ続け、しかもそこから離れようという強い意思を発揮することも難しくなります。こうなると独力での解決はとても困難になります。
人はあらゆる他者のニーズから一定の距離をおいてはじめて、「自分のニーズ」に関心を向けることができるようになります。
そして、自分のニーズがわからなければ、いつまでたっても自分のニーズと他人のニーズのバランスをとれる様にはなりません。
本当の休みのキーワードは「安全」「安心」
本当の休みをとるとは、自らの「身体のニーズ」を把握し、それに応えることで自分自身とのつながりを取り戻し、心身が安全・安心を感じられる状態にすることで、これが本当の「癒し」につながるのです。
「頭ではなく、身体が求めていること」を満たしてあげるということです。
しっかり休み、心身が回復すると
- いきいきした表情になる
- 人生の充実感が上がる
- 「こうあるべき」という強迫的な思考と距離がとれるようになる。
- 心身のコンディションが安定しパフォーマンスが発揮できるようになる。
心身ともにしっかり休みがとれると、「優しくなった」「ご飯が美味しくなった」「旅に出ることが増えた」「前よりも自分のことを好きになった」と実感することも増えてきます。
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