腰痛治療

今回ご紹介する書籍は「腰痛は怒りである」著者は長谷川 淳史(はせがわじゅんし)先生で、春秋社より出版されています。

著者によると、まず腰痛についてわかっていることは、次の三点だそうです。

・腰痛患者は急激に増加している
・腰痛の真の原因はいまだに不明である
・今ある治療法の有効性は科学的に証明されていない

厚生労働省のホームページでも、腰痛の85%は原因不明と発表されています。

腰痛の原因85%は原因不明
出典:厚生労働省

ヴードゥー死・ノーシーボ

「 ヴードゥー死 」もしくは「ノーシーボ 」という現象があります。第二次世界大戦前のヨーロッパで、次のような実験が行われました。

ヨーロッパのある国にブアメードという名の死刑囚がいました。彼はある医師から、医学の進歩のために危険な実験に協力してもらえないかと持ち掛けられました。人間の全血液量は体重の10%が定説となっているが、我々は10%を上回ると考えているので、ぜひそれを証明したいというのです。彼はその申し出を受け入れ、間もなく実験が開始されることになりました。

目隠しをされてベッドに横たわったブアメードは、血液を抜き取るために足の全指先を小さく切開されました。足元には容器が用意され、血液が滴り落ちる音が実験室内に響き渡ります。ブアメードには一時間ごとに累積出血量が告げられました。やがて実験開始から五時間がたち、総出血量が体重の10%を超えたと医師が大喜びしたとき、哀れこの死刑囚は既に死亡していました。

ところがこの実験、実は血液など抜き取ってはいなかったのです。彼にはただの水滴の音を聞かせ、体内の血液が失われていると思い込ませただけだったのです。これが最近注目を集めている 「 ヴードゥー死 」あるいは「ノーシーボ 」 と呼ばれる現象です。

要は暗示によるショック死なのです。腰痛にもストレスやその他の心因性のものがあるのではないでしょうか。

医師や治療家、テレビや新聞などのマスメディアなどで、腰痛の原因が年齢のせいとか、背骨や椎間板の変形のせいなどとネガティブな暗示をかけられていることが腰痛の原因になっている場合もあるのです。

腰痛の患者を、数日で治ると自信をもって告げた群(A群)と、曖昧な診断を下して否定的な結果を連想するように仕向けた群(B群)とを比較したところ、否定的な説明をするよりも、肯定的な説明をした方が二倍近く治りが速いことが証明されました。

この様に腰痛に対するマイナスの暗示を解くだけでかなりの効果が表れるのです。

何が腰痛の原因なのか?

まず結論から言いますと、レントゲンやCTスキャン、MRIなどで見つかる異常は、必ずしも腰痛の原因ではないということです。

腰椎の椎体の変形である骨棘(こつきょく)は、20代から始まり、50代では70%、70代になると90%に認められています。

また、椎間板ヘルニアがあっても症状のない人が大勢います。健常者をCTスキャンで椎間板を調べた実験では、20~27%に椎間板ヘルニアが確認されていますし、MRIによる実験でも、21~36%に椎間板ヘルニアが見つかっています。

確かに変形の程度の差にもよりますが、この様に見た目で変形があっても、症状としては全く関係ない場合が多いのです。

また、「背骨や骨盤のずれ」という言葉をよく聞きます。カイロプラクティックオステオパシー、整体などの代替療法の世界で頻繁に用いられる言葉です。

これなども、単に触診で見つかる背骨の不正列や骨盤の歪みは誰にでも見られるもので、異常ではなく直接的な腰痛の原因になっていないことも多いのです。

実際に背骨を触診してみると、線で引いたみたいに真っすぐな人は一人もいませんし、左右非対称が自然なのです。

古代中国の哲学者、荘子も次のように述べています。

間違いのない正しさ
乱れのない秩序を求める者は
この天地の原理を知らない者である。
彼はものごとがいかにつながり合って存在しているかを知らない。

実は私も臨床の現場で患者さんにこの様な表現で説明することもあるのですが、便宜上この様に伝えた方が説明しやすいためで、あまりにも専門的に難解になってはいけないという理由からです。

従来の治療は効くのか?

腰痛の治療法には様々なものがありますが、有効かどうかを判断する材料として、プラシーボ効果を上回るかどうかということです。

安静臥床…長期間の安静臥床は回復を遅らせるのです。筋委縮(一日当たり筋線維が1.0~1.5%縮小)、心肺機能低下(十日間で酸素消費量が15%低下)などの副作用があります。
薬物療法…薬物療法は対症療法であり、腰痛の根本原因を治療しているわけではありません。また副作用の心配もありますので注意が必要です。
牽引…整形外科に行くと腰を牽引する機械がありますが、本気で牽引が効くと考えている専門家は、ほとんどいないと思います。私も整形外科に勤めていたことがありますが、そこの医院長先生は、牽引や物理療法は治療というよりも「サービスです」と仰っていました。つまり慰安サービスということです。
腰部コルセット…腰痛を治す効果はありませんが、ぎっくり腰のような急性の強い痛みがある場合は、急場をしのぐ意味で着用した方がよいと思います。慢性腰痛の方が常にコルセットをし続けることはお勧めいたしません。
理学療法…低周波、干渉波、超音波、マイクロ波、遠赤外線などいわゆる電気治療などに腰痛改善の有効性は確認されていません。これらの効果はプラシーボ効果を上回ることがないのです。
運動療法…運動療法は、体幹のトレーニングなどを有効に行えばそれなりの効果はあると思います。しかし、私の臨床経験では、それによって腰痛が劇的に改善した方を見たことがないのも事実です。
足底板…インソールは、無作為対照試験の結果があります。腰痛が軽減したのは44%、51%は変化なし、3%は悪化したそうです。この数字はプラシーボが働いていることも考えられますので、有効とは言えない数字です。
マニュピレーション…カイロプラクティックやオステオパシー、整体などの脊椎療法がありますが、カイロプラクティックやオステオパシーについては、腰痛治療に対してその有効性が認められています。ただし日本はカイロプラクティックが法制化されていませんのでご注意ください。
外科手術…重大疾患が明らかにあり、手術が必要なものもありますが、それ以外では安易に手術を選択しない方が良いのです。手術には必ずリスクもあります。10年後の追跡調査では、手術と保存的療法において、腰下肢痛の改善に大差がないことがわかっています。また、不幸にして手術が失敗した場合、手術前のもとの状態に戻してくれと言っても、一度手術したものはもとには戻せません。慎重な判断が求められます。

サーノ博士のTMS理論

TMS(Tension Myositis Syndrome)の頭文字からとった略称で、日本語に訳すと「緊張性筋炎症候群」ということになります。サーノ博士は、TMSの定義を「痛みを伴う筋肉の生理的変化」としています。

椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症、五十肩、手根管症候群など、すべては共通した原因による一つの症候群だということです。

サーノ博士が腰痛などの筋骨格系の疾患を診療していると、教科書通りでない患者に出会うたびに悩み続けました。

やがて博士は興味深い事実を発見することになります。筋骨格系疾患に苦しむ患者の約9割は、「心身症」と呼ばれる病態を持っているということです。

要するに、筋骨格系疾患を抱える患者の大部分が、心理的緊張によって生じる病態を経験していたわけです。

サーノ博士は、患者が訴えている痛みの原因も、心の緊張にあるのではないかと考えました。

当院の患者Mさんにも、怒りと腰痛の関係を実体験した方がいます。Mさんは、学生の時に泥棒を見つけました。その時泥棒に対して怒りを覚え、追いかけようとしたときに、腰に激痛が走りぎっくり腰になって動けなくなってしまいました。

また、Mさんはある日、奥様と口論になり、激高したときにまたしても腰に激痛が走り、ぎっくり腰になってしまったというのです。この様に怒りと腰痛が関係しているということがよくわかる事例があったのです。

TMS理論では、腰痛も坐骨神経痛も心身症だということになります。これは日本心身医学会でも認められていることです。

サーノ博士が心身症を疑うようになってからは、次々と新しい発見をするようになりました。痛みの原因が心にあることを認めた患者は、それを否定した患者に比べると、より早く改善していることに気づいたのです。

筋骨格系疾患に対する最も重要な治療的要素は、自分の身体に起きていることを、本人が正確に理解することだと確信するようになりました。そして、それを患者に理解させるための情報は筋骨格系疾患の「特効薬」になり得るという結論に至ったのです。これがTMS理論の始まりです。

TMSと自律神経は密接な関係があります。自律神経は全身の血流量を調整していますが、実は、TMSによる痛みの直接的原因は、血流不足によって起こる酸素欠乏なのです。

慢性的なストレスによて筋肉に酸素欠乏が起こるのです。とりわけ下図に示すような二か所がTMSに冒されやすい傾向があります。TMSが標的とする組織は、「筋肉」「神経」「腱・靱帯」の三つです。

TMSに冒されやすい部位
TMSに冒されやすい部位

防衛機制

不思議なのは、重症な患者ほど「ストレスはない」と断言する傾向があることです。それは「防衛機制」が働いているからなのです。実はこれがTMSの根本原因なのです。

防衛機制とは、精神的破局を避けるための心の働きで、中でも「抑圧」がTMSの発症に関わっています。この抑圧した不快な感情から意識をそらせようとして、肉体に痛みとして症状を出させ、本人の注意を完璧に身体に引き付けておこうとするのです。

TMSは不快な感情から注意をそらすために存在するのです。ストレスが強いほど、それを覆い隠す腰痛などの症状も強くなるのです。

私は逆の考えもありだと思います。意識の深い部分に溜まっている怒りの感情のエネルギーに気づいてほしいがために、腰痛などの身体症状としてサインを送っているのではないでしょうか。

不快な感情に意識を向け、認識することで自分自身が癒され治癒のプロセスが働くのですから、からだは根本的な解決をするためにい痛みなどの感覚を通して、ネガティブな感情エネルギーが溜まっていることを知らせてくるのだと思います。

原因となる感情

「怒りは短き狂気なり」という諺があります。仏教でも怒りは心の三毒の一つに挙げられるほど強い感情です。

私たちはこの怒りの感情をストレートに表に出さないように親や学校、社会からしつけられてきました。そのため私たちは、怒りを抑圧する癖がついてしまったのです。

TMSの原因となる無意識下に抑圧された怒りは、次の三種類に大別できます。

①日常生活におけるプレッシャーによる怒り
②幼少時に受けた心的外傷による怒り
③欲求を満たすために自ら課したプレッシャーによる怒り

また、これらの怒りを生じやすい性格があるそうです。

①完璧でありたい
②人に好かれたい
③見捨てられたくない
④満足したい
⑤強靭な肉体でありたい
⑥死にたくない

この様に欲望が強ければ強いほど、それとは裏腹に十分に満たされない挫折感から激しい怒りが生まれてしまうのです。

ただし、サーノ博士は、怒りはある状況に対する情動反応のひとつでしかなく、情動そのものは基本的に善でも悪でもないと言っています。

怒りを嫌悪したり、見ないように蓋をしたりしないで、ただ怒りを観察してくださいとアドバイスしています。

東洋医学

サーノ博士は、TMSの定義を「痛みを伴う筋肉の生理的変化」としていますが、東洋医学でも、「怒り」と「筋肉」とは密接に関係しあっています。

下の図の「木」に属するものに、怒りの感情や、筋肉があるのです。怒りという心の緊張が、筋肉という体の緊張をつくっていて、結果として腰痛などの症状になるということです。

陰陽五行

治療法

TMS治療プログラムを開始するに当たって、次の予備知識が必要になります。

1.痛み、凝り、灼熱感、知覚異常、筋力低下などは、筋肉や神経もしくは腱の中の軽い酸素欠乏によって起きている。
2.TMSの症状は、臨床医学の中で経験するどんな疾患よりも強い痛みを生み出すが、症状が消えてしまえば後遺症は残らないし、基本的には全く無害なものである。
3.その痛みの原因は無意識下に抑圧された怒りである。TMSとは、抑圧された怒りから意識の焦点をそらすために作り出されたものである。
4.痛みの原因となる怒りは、日常生活上のストレス、幼少時のトラウマ、完全主義や善良主義による内的葛藤の総和であり、抑圧された怒りの程度と症状の程度は一致している。
5.症状はTMS理論の内容を理解するにつれて消えていくので心配はいらない。

毎日の注意

患者は、毎日リラックスした時間を選び、少なくとも1日1回15分ほどかけて、「毎日の注意」を読みTMS理論を復習することが義務付けられています。

毎日の注意

・痛みは構造異常ではなくTMSのせいで起こる。
・痛みの直接原因は軽い酸素欠乏である。
・TMSは抑圧された感情が引き起こす無害な状態である。
・主犯たる感情は抑圧された怒りである。
・TMSは感情から注意をそらすためにだけ存在する。
・背中も腰も正常なのでなにも恐れることはない。
・それゆえ体を動かすことは危険ではない。
・それゆえ元のように体を動かすべきである。
・痛みを気に病んだり怯えたりしない。
・注意を痛みから感情の問題に移す。
・自分を管理するのは無意識ではなく自分自身である。
・常に身体ではなく心に注目して考えなければならない。

この「毎日の注意」は一種のアファーメーションです。TMSのところを腰痛や坐骨神経痛に変えて読んでもいいのです。

ストレ・スリストの作成

「平安の祈り」という祈りの言葉があります。出典は不明ですが、アルコール依存症者自主治療協会のメンバーの間で、広まった祈りの言葉だそうです。

神よ お与えください
変えられないものを受け入れる 心の静けさを
変えられるものを変えていく 勇気を
そしてこの二つを見分ける 賢さを

怒りに関係するストレスを書き出してリストをつくり、自分の力で変えられることと、自分の力では変えられないことの二つに分類するのです。

自分の力で変えられることは、今すぐ行動に移して変えていき、自分の力で変えられないことは、心の静けさをもって、その事実を受け入れましょう。

TMSを完治させるには、問題を取り除く必要はありません。問題の存在、怒りの存在にただ気付いているだけでいいのです

瞑想と熟考

一人静かに座って、良くなるためには何をすべきか、ゆっくり考えてみることが大切です。

瞑想とは「今・ここ」に生きる訓練です。私たちは1日6万回以上も思考していると言われています。その9割が同じ事を繰り返し考えているそうです。更にまた、その8割がネガティブな思考だと言われています。

瞑想中に雑念妄念がでてきて、心がさまよい出したら、根気よく「今・ここ」に注意を引き戻します。

サーノ博士は、怒りの存在に気づく余裕もないような多忙な人生を送っていては、改善は望めないと言っています。

瞑想を使って、内省する時間を持つことは、心と体の健康のためにとても有効なのです。

また、自分の心の中の問題を熟考する時間を設けることが大切です。現代生活では、自分の外にあるネットやテレビなどの情報が多すぎて、自分の内面を見つめる時間が取れなくなっています。この様な問題を解決するには、情報遮断をして無益な情報をカットすることです。

そして、熟考の末、腰痛の原因になっている怒りなどの感情に気づいたら「もうこの問題で腰痛を起こさせるつもりはない」と宣言することです。

腰痛を完治させるのに必要なのは、抱えている問題を取り除くことではなく、それが痛みの原因だった、ということに気づくことなのです。

読む薬

TMS治療プログラムが情報を伝える認識療法であるからには、本書やサーノ博士のヒーリング・バックペインなどを読むといいのです。こうした本を読むことが有効な治療手段になるのです。まさに「読む薬」として作用します。

その時のポイントは、3回以上読み返すことです。繰り返し読むことで理解が深まり、着実に痛みが減少してくるようです。

まとめ

TMS ( 痛みを伴う筋肉の生理的変化 )は、その根本原因である「怒り」の感情を認識するだけで治ってしまいます。

これはあたかも「鬼ごっこ」の鬼探しに似ています。心の中に隠れている怒りという鬼を見つけたら問題は解決するのです。

量子力学でも量子は、観測すると挙動が変わると言われます。怒りの感情もエネルギーだとしたら、それを観測すると挙動が変わり結果として腰痛も改善されるのではないでしょうか。

今回はこの様な心と体の不思議な関係のお話でした。

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肩こり・腰痛・坐骨神経痛・椎間板ヘルニア・ぎっくり腰・めまい・頭痛・脊柱管狭窄症・自律神経失調症・五十肩・膝の痛み、股関節の痛み等、様々な症状の根本原因を施術する整体治療院 。あん摩・マッサージ・指圧師の国家資格取得者「札幌 キネシオロジーの谷井治療室」です。

全国どこでも遠隔施術も承ります。https://www.taniithiryousitu.com/distant-healing/
札幌市営地下鉄中島公園駅から徒歩1分と好アクセスです。

ご予約は TEL: 011-211-4857 にお電話下さい。

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