エレベーターの点検から学んだこと

エレベーター

私はこの業界に入る前は、エレベーターやエスカレーターなどのメンテナンスを行う仕事をしておりました。

入社した当時は、エレベーターの制御方式がメカニカルなリレーからプリント基板による制御へと変わりはじめた時代でした。

インバーター制御による周波数変換によって、モーターの回転数を調整して、エレベーターの速度を調整するという最新型の機種が世の中に出ようとしていたそんな時代でした。

N(回転数)=120×F(周波数)/P(極数) 【交流モーターの回転数の公式】

ちょっと専門的になりますが、この時代以前は、モーターの回転数(N)は、モーターの電磁石の極数(P)を切り替えて加減速していましたが、インバーターが出てからは周波数(F)を変えることで、なめらかに回転数を制御できるようになりました。(当時としては画期的なことでした)

専門的になりすぎてゴメンなさい!

簡単に言えば、古いものと新しいものが混在していた時期でした。

社員研修の内容も、職人技と同時に、コンピューター制御などの先端理論を学ばなければいけない時代でした。

当時の新人研修に、伝統の製作実習というものがありました。泣く子も黙る、新人研修名物の鋳物の斫(はつ)り作業です。鋳物(鋳鉄)はその両端に不純物が溜まりやすく、とても固くなってノコギリやヤスリでは歯が立たない状態になります。

その部分をタガネ(ノミのような工具)とハンマーを使って削ってゆくのです。

これが大変な作業で、鬼も逃げ出すほどの辛さなのです。

まず鋳鉄を万力に固定します。左手にタガネを握り、右手には1ポンド(453.6グラム +柄の重さ)ハンマーを頭上に大きく振り上げます。

そして鬼教官の掛け声とともに、その位置からハンマーを一気にタガネめがけて振り下ろします。やってみれば分かると思いますが、大きく振り上げた1ポンドハンマーを、タガネの頭に一気に振り下ろして当てるのは、とても難しいというよりも、ほとんど不可能な状態です。

ではどうなるかと申しますと、とても凄惨な状態が待っているのです。

ハンマーはタガネではなく、タガネを固定している自分の左手を思いっきり直撃してしまうのです!ヒェー(一応、軍手をはめているのですが、ハンマーの衝撃吸収とまではいきません)

ハンマーでしたたかに打ち付けられた左手は、みるみる腫れあがります。おまけに、すぐにハンマーをもとの頭上へ振り上げた位置に戻さなくてはいけないのです。この振り上げている時間は恐らく5~6秒だったと思いますが、妙に長く感じました。教官の号令とともに、これを延々と繰り返すのです。

ハンマーを持つ右腕は疲れてぶるぶると震えてきて、益々タガネに当たらなくなってきます。その結果、タガネを持つ左手はハンマーの直撃でさらに腫れあがります。

皆まともにやっていたら、体が壊れてしまうので、少しづつ手を抜き、ハンマーを振り下ろすスピードを直前でゆるめ、手を打たないように工夫しだします。(教官にわからないように)

まさに血と汗と涙にまみれた研修でした。いま思えば、精神鍛錬のためには良かったと思いますが、それ以外に何の意味があったのか、いまだに理解不能な研修でした。

しかし、こんな研修が、その数年後には無くなったのです。これは会社が社員に対し職人の技能を要求しなくなった現れです。(まあ、今の時代にあの研修をやったら、退職者続出じゃないかと思います)

機械の進歩とともに、仕事はマニュアル化され、誰がやっても大差がないようになってきました。それと同時に、職人技を要する細かな調整などの機会がだんだん減ってきました。

エレベーターの機械室には、大きな接触器があり、これでモーターに流れる電流を切り替えているのですが、200Vの交流の電源を切り替えるため、その接点には大きな電流も流れます。(正確に何アンペアかは忘れましたが、ヒューズの容量が確か10~15Aだったので、それ以下だと思います)

そのため、接点の接触面の当たりや、フォローアップ(接点が接触した後の押し込み量)がしっかりとれていないと、接触抵抗が増えるため過電流が流れてしまい、接点が熱で溶けてしまうか、ヒューズが飛んでしまいます。

これらの調整も、職人技で一つ一つ丁寧に調整していました。しかし、その後はメンテナンスのほとんど必要のない電磁接触器に変わりました。

また、エレベーターのカゴと乗り場の段差も昔はよくあったものですが、今のエレベーターはほとんどなくなりました。昔は主にモーターに直結した巻き上げ機をブレーキで最終的に減速させ停止させていたため、季節による気温の変化でも摩擦係数が変化し、エレベーターの停止距離が変化してしまいました。

これをブレーキスプリングの強さと、電磁石のプランジャーストロークによる調整で、カゴと乗り場の段差が最小になるように調整したものです。

しかし今は、モーターの回転を電子制御で行っているため、スピードを制御するためのブレーキではなく、停止したモーターがそれ以上勝手に動かないように押さえつけるためのものにブレーキの役割が変わってしまいました。

これらはほんの一例で、あらゆるものが職人技を必要としないものへと変わって行ったのです。これはこれで技術革新としては望ましいことですが、何か寂しいものを感じずにはいられませんでした。

昔は職人技を持つ先輩が誰からも尊敬され、皆の憧れと目標になっていました。ところがその後は、最新の電子制御の知識を持つインテリタイプが、尊敬され重用されるようになり、単なる職人はバカにされ、冷遇されるような風潮になりました。合理化とは寂しいかぎりです。

治療家

その後私もその会社を去り、今は治療師の世界に生きていますが、道は違えど、職人の心と感性はこれからも大切にしてゆきたいと思っています。いくら技術が進歩しても、人間にしかできないことってあると思います。こんなことを言っていると私も古いと言われるかもしれませんが、古くて結構!

実際の臨床の現場では、カイロプラクティックでもオステオパシーでも、職人技の世界であります。目の前の患者さんは一人一人違うので、当然治療のテクニックもマニュアル化はできませんし、施術者が必ず介入しますので、それ相応の知識と技術・技能を要します。

カイロプラクティックやオステオパシーでは、卒後教育として臨床家向けのセミナーがたくさんあります。どのセミナーに出ても共通することは、習って次の日から簡単に使えるものはないということです。熟練を要するのです。

AIの技術が進化して、もしかしたら機械が全て治療してくれる時代が来るかもしれませんが、機械ではとらえられない領域を扱っていますので、今のところはやはり人間の能力によるところが大きいというか、全てといっても過言でないと思います。

医師の世界もそうですが、名医とかゴッドハンドと形容されるように人間の技能が医学の世界で十分に役立っているのです。

懐古主義

昔は良かった・・・と今を嘆く懐古主義者の時代遅れな戯言のように聞こえるかもしれませんが、昭和の時代の良さを享受してきた私には、本当に昔は良かったなと思う時があります。

三種の神器として庶民の憧れであったテレビも、今ではどの家庭にもあるし、一人一台の時代になってしまった。その性能も地デジ・薄型・大画面など、十分すぎるほどに進化している。

さて、そのテレビに映し出される番組の質はどうだろうか。テレビと共に進化してきただろうか。私の個人的意見としては、テレビがつまらなくなったので、あまり見なくなったというのが事実。番組の質としては退化しているものもあると思います。

テレビばかりを見ているとバカになると、一億総白痴化を唱えた大宅壮一が今のテレビ番組を見たら、いったいどんなコメントをするのだろうか。

話は変わって、健康問題はどうでしょう。最新の医療機器、高度医療、病院の増加(乱立?都市部に集中)、医師数の増加、毎年増える夢の新薬(?)・・・ その結果として、病気は減ったでしょうか。国民医療費は削減されたでしょうか。ここにも進化と退化の相反する現象が露呈しています。 昔は良かったと、つい口にしてしまう私は、鶴田浩二の『傷だらけの人生』じゃないけど、古いやつなのでしょうか。

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肩こり・腰痛・坐骨神経痛・椎間板ヘルニア・ぎっくり腰・めまい・頭痛・脊柱管狭窄症・自律神経失調症・五十肩・膝の痛み、股関節の痛み等、様々な症状の根本原因を施術する整体治療院 。あん摩・マッサージ・指圧師の国家資格取得者「札幌 キネシオロジーの谷井治療室」です。

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