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顎関節は「噛むためだけ」の関節ではありません

顎関節と全身のつながりを表現したCGイラスト。頭蓋骨・頸椎・脊柱・姿勢の関係を示し、顎関節症を全身から考えるイメージ

顎関節というと、多くの方は「食べ物を噛むために動く関節」というイメージを持たれるのではないでしょうか。

確かに顎関節は、食べ物を噛む、口を開ける、飲み込む、言葉を話すといった日常動作に欠かせない関節です。しかし、全身の構造や姿勢との関係から見ると、顎関節の役割はそれだけではありません

顎関節は、頭の位置や首の動き、背骨や骨盤、さらには足元から伝わる身体のバランスとも関係する、全身にとって重要な関節の一つです。

顎関節は頭蓋骨の中で大きく動く特殊な関節です

人間の頭部は、複数の頭蓋骨と顔面骨が組み合わさって構成されています。これらの骨の多くは縫合と呼ばれる部分でつながっていますが、その中で下顎骨は、顎関節を介して頭蓋骨に接し、口の開閉や左右への移動など、大きな動きを行います

顎関節は左右一対で働き、単純な蝶番のように開閉するだけではありません。口を開けるときには回転運動と前方への滑走運動が組み合わさり、左右の関節が協調しながら複雑な動きを行っています。

そのため、左右の筋肉の緊張、頭の傾き、首のねじれ、噛み合わせの偏りなどがあると、顎関節にも左右差や動きの乱れが生じることがあります

反対に、顎関節の動きや噛み合わせのバランスが崩れることで、頭の位置や首まわりの筋肉に負担がかかり、身体が別の場所でその偏りを補おうとする場合もあります。

食事・会話・表情を支える顎関節

顎関節は、食べ物を噛み砕く咀嚼運動だけでなく、会話、嚥下、あくび、呼吸、表情をつくる動作にも関係しています

私たちは話すとき、下顎を細かく動かしながら舌や唇、頬の筋肉を協調させています。笑う、驚く、緊張するといった表情の変化にも、顎や口まわりの筋肉が関与しています。

また、精神的に緊張しているときには、無意識に歯を食いしばったり、顎に力を入れたりすることがあります。反対に、安心しているときには顎や口まわりの緊張が緩みやすくなります。

このように顎関節は、単なる食事のための関節ではなく、人間のコミュニケーションや感情表現とも深く関わる部位です。

顎関節には全身のバランスを調整する側面があります

人間は、地球の重力を受けながら、二本の足で身体を支えています。その状態で視線を水平に保ち、歩いたり、立ったり、座ったりするためには、足関節、膝関節、股関節、骨盤、背骨、首、頭部が互いに連携しなければなりません。

身体のどこかに傾きや動きの制限が生じても、私たちはすぐに倒れるわけではありません。別の関節や筋肉の使い方を変えることで、全身がその乱れを補正し、バランスを保とうとします。

例えば、足首の動きに左右差が生じると、その影響を膝や股関節、骨盤、背骨などが補うことがあります。そして、その連鎖が首や頭部まで伝われば、頭の位置を保つために、顎関節や噛み合わせの状態にも変化が生じる可能性があります。

顎関節は身体の最上部に位置し、頭蓋骨と下顎骨の間にある関節です。そのため、足元から積み重なってきた全身のバランスの変化を受ける場所であると同時に、顎関節側の変化が首や背骨を通じて全身へ波及する可能性のある場所でもあります。

つまり、顎関節と全身の関係は、一方通行ではありません。

全身の歪みや動きの偏りが顎関節に影響することもあれば、顎関節や噛み合わせの変化を身体のほかの部分が補正していることもあります。

全身の歪みは顎関節まで伝わります

人間の身体は、それぞれの関節や筋肉が独立して働いているわけではありません。

立つ、歩く、座る、走るといった日常の動作では、足元から頭まで全身が一つのユニットとして連動しています。

そのため、足関節や膝関節、股関節、骨盤、脊柱など、身体のどこかに動きの偏りやバランスの乱れが生じると、その影響は連鎖するように全身へ伝わっていきます。

オステオパシーでは、このような身体のつながりを重視し、一つの関節だけで身体全体のバランスが保たれているのではなく、全身が互いに補い合いながら重力に適応していると考えます。

その連鎖の終着点の一つが、顎関節です。

顎関節は、頭蓋骨と下顎骨をつなぐだけの関節ではありません。

身体の最上部に位置し、全身から伝わってきたわずかなバランスの変化を受け止めながら、頭部の位置や噛み合わせの安定にも関わっています。

さらに重要なのは、この関係が一方向ではないということです。

全身の歪みが顎関節へ影響するだけでなく、顎関節や噛み合わせの変化が首や脊柱、骨盤、さらには下肢へと影響を及ぼすこともあります。

つまり、顎関節は全身の影響を受ける「終着点」であると同時に、全身へ影響を与える「出発点」にもなり得るのです。

そのため当院では、顎関節だけを診るのではなく、足元から頭部までのつながりを一つのシステムとして評価することを大切にしています。

TEL 011-211-4857

足関節から顎関節へ伝わる身体の連動

全身のバランスと顎関節の関係を示す図|足関節から顎関節へ伝わる身体の連動

人間の身体は、それぞれの関節が独立して働いているわけではありません。

歩く、立つ、階段を上る、しゃがむなどの日常の動作では、足元から頭部まで全身が連携しながら動いています。そのため、一つの関節に生じたわずかな変化が、連鎖するようにほかの関節へ伝わることがあります。

例えば、足首の動きが制限されたり、左右の足の接地バランスが崩れたりすると、その影響を補うために膝関節や股関節の動きが変化します。

さらに、その変化は骨盤の土台である仙腸関節、背骨、首、頭蓋骨へと伝わり、最終的には顎関節の位置や動きにも影響を及ぼすことがあります。

このような身体の連動は、次のようなイメージで考えると理解しやすいでしょう。

足関節 → 膝関節 → 股関節 → 仙腸関節 → 脊柱 → 頭蓋骨 → 顎関節

もちろん、すべてのケースがこの順番で影響するとは限りません。しかし、人間の身体は重力に適応しながらバランスを保っているため、一つの部位だけが完全に独立して働くことはほとんどありません。

そのため、足元のわずかな左右差や姿勢の変化が、時間の経過とともに全身へ影響を広げることがあります。

当院でも、腰痛や肩こり、首の痛みを主訴として来院された患者さんを評価していると、足関節や骨盤のバランスを整えることで、顎の開閉や噛み合わせの感覚が変化するケースや、逆に顎関節を調整することで立位姿勢や歩行時の安定性が改善するケースを経験しています。

このような変化は、顎だけ、あるいは足だけを診ていては気づきにくいものです。

だからこそ当院では、痛みや違和感が現れている部位だけでなく、足元から頭部までを一つの運動連鎖(キネティックチェーン)として評価することを大切にしています。

全身のつながりを理解することは、顎関節の役割をより深く理解する第一歩になると考えています。

顎関節は身体の「キーストーン」の一つです

顎関節を身体のキーストーンの一つとして示し、足関節・仙腸関節・脊柱とのつながりと全身のバランスを表現したイラスト

顎関節は身体の「キーストーン」の一つです

この考えは、私の30年以上の臨床経験の中で、特に重要だと考えています。

建築には「キーストーン(Keystone)」という言葉があります。

石造りのアーチ橋やアーチ状の建物では、頂点にある一つの石が全体を支えています。この石を取り除くと、周囲の石同士のバランスが崩れ、アーチ全体が不安定になってしまいます。

この最も重要な石が「キーストーン」です。

人間の身体も同じように、一つひとつの関節や骨が独立して存在しているわけではなく、それぞれが互いに影響し合いながら全身のバランスを保っています。

その中でも、身体全体のバランスに大きな影響を及ぼす重要な部位があります。

  • 足関節
  • 仙腸関節
  • 脊柱
  • 顎関節

の四つです。

これらは身体全体のバランスを左右する重要な「キーストーン」のような役割を担っています。

なかでも顎関節は、身体の最上部に位置し、頭蓋骨と下顎骨をつなぐ唯一の大きく動く関節です。

そのため、全身から伝わってきたバランスの変化を受け止めるだけでなく、顎関節や噛み合わせの変化が、首や脊柱、骨盤を介して全身へ影響を及ぼすことも少なくありません。

だからこそ当院では、顎関節を単なる「口を開け閉めする関節」としてではなく、全身のバランスを考えるうえで重要なキーストーンの一つとして評価しています。

歯一本の変化でも全身のバランスは変わることがあります

「たかが歯一本で身体まで変わるのだろうか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、歯や噛み合わせの変化が全身に影響を及ぼす可能性は、歯科や口腔機能の分野でも以前から注目されています。

例えば、

  • 歯を失って噛み合わせが変化した
  • 詰め物や被せ物を入れ替えた
  • 親知らずを抜歯した
  • 入れ歯を新しく作った
  • 矯正治療によって歯並びが変化した

このような変化をきっかけに、「噛みやすさが変わった」「首や肩の感じが以前と違う」「姿勢が変化したように感じる」と話される方も少なくありません。

もちろん、これらの変化だけで必ず全身の不調が起こるわけではありません。

しかし、人間の身体は足元から頭部まで一つのシステムとして連動しているため、噛み合わせの変化を身体全体が補おうとすることは十分に考えられます

身体は、一つの部位だけが単独で働くのではなく、互いに影響し合いながら全体のバランスを保っています。歯や顎も、その例外ではありません

特に顎関節は、頭蓋骨と下顎骨をつなぐ重要な関節です。

噛み合わせが変わると、顎関節の位置や動きがわずかに変化し、それに伴って咀嚼筋や首の筋肉の使い方が変わることがあります。さらに、その変化が姿勢の調整を通して全身へ影響する場合もあります

当院でも、「歯の治療をしてから身体のバランスが変わった気がする」「新しい入れ歯にしてから肩や首がつらくなった」「噛み合わせを調整してから立ちやすくなった」といったご相談を受けることがあります。

もちろん、原因は一人ひとり異なりますので、すべてを噛み合わせだけで説明することはできません。

だからこそ当院では、顎だけを見るのではなく、足関節・骨盤・脊柱・頭蓋骨を含めた全身のバランスを総合的に評価し、その方にとって本当に影響している要因を丁寧に確認しながら施術を行っています。

次の章では、噛み合わせの変化が全身へ影響する可能性について、動物実験から得られた興味深い研究をご紹介します。

研究から見えてきた顎と全身のつながり

「噛み合わせは口の中だけの問題」と考えられていた時代がありました。

しかし近年では、顎や噛み合わせと姿勢・頸椎・脊柱との関係について、多くの研究が行われるようになっています

動物実験では、サルやラットを用いて、咬み合わせの変化や片側だけで咀嚼を続けた場合に、頸椎や脊柱のアライメント(骨の配列)に変化が生じることが報告されています。また、コンピュータによる有限要素解析では、咬む力の左右差や咬合平面の傾きが頸椎へ加わる応力を変化させることも示されています。

さらに、人を対象とした研究でも、噛み合わせや下顎の位置と姿勢との関連性が報告されており、顎口腔系と全身は互いに影響し合う一つのシステムとして考えられるようになってきました。

もちろん、これらの研究だけで「噛み合わせがすべての不調の原因である」と結論づけることはできません。 姿勢や身体のバランスには、骨盤・脊柱・筋肉・神経系・生活習慣など、多くの要因が複雑に関係しています。

しかし、顎もまた全身を構成する重要な一部であり、身体全体とのつながりの中で考えるべきであることは、多くの研究が共通して示唆しています。

私自身も30年以上にわたり臨床に携わる中で、顎関節や噛み合わせへのアプローチによって、首や肩の緊張、姿勢のバランス、身体の動きが変化する場面を数多く経験してきました。

だからこそ当院では、顎だけを診るのではなく、足部・骨盤・脊柱・頭蓋骨・神経系まで含めて総合的に評価し、その方にとって本当に必要な施術を行っています。

研究が明らかにしている「顎と全身のつながり」と、30年以上の臨床で培ってきた経験。その両方を大切にしながら、一人ひとりのお身体を丁寧に診させていただいています。

参考文献

  1. Tardieu C, Dumitrescu M, Giraudeau A, et al. Dental occlusion and postural control in adults. Neuroscience Letters. 2009;450(2):221-224.
  2. Shimazaki T, Motoyoshi M, Hosoi K, et al. The effect of occlusal alteration and masticatory imbalance on the cervical spine. European Journal of Orthodontics. 2003;25(5):457-463.
  3. Ramirez-Yanez GO, Mehta L, Mehta NR. The effect of dental occlusal disturbances on the curvature of the vertebral spine in rats. CRANIO. 2015;33(3):217-227.
  4. Zhou S, Yan J, Da H, et al. A correlational study of scoliosis and trunk balance in adult patients with mandibular deviation. PLoS ONE. 2013;8(3):e59929.

猿の犬歯の研究から分かること

サルを用いた実験では、上下顎左右の犬歯歯冠を切断・除去したところ、ブラキシズム(歯ぎしり)が開始されたことが報告されています。¹

この研究の目的は、咬合性外傷(噛み合わせによって歯や歯周組織に過度な負担がかかった状態)を再現し、その変化を観察することでした。しかし、その過程で犬歯の変化に伴いブラキシズムが生じたという事実は、犬歯が咬合全体のバランスを保つうえで重要な役割を担っていることを示唆する興味深い知見といえます。

生体は、噛み合わせに変化が生じても、そのままではなく、新しい環境へ適応しようとします

筋肉の使い方を変えたり、顎の動きを調整したりしながら、できる限り全体のバランスを維持しようとするのです。

これは顎だけに限らず、人間の身体全体にも共通する特徴です。

私たちの身体は、常に周囲の環境や身体の変化に適応しながら恒常性(ホメオスタシス)を保とうとしています。

この「適応する力」は、人間が本来備えている素晴らしい能力であり、身体を理解するうえで非常に重要な視点だと私は考えています。

参考文献

1)北村秀和.サルにおける咬合性外傷に関する実験的研究.日本歯周病学会会誌.1990;32(2):554-586.doi:10.2329/perio.32.554

人間は適応するが、影響が消えるわけではない

人間の身体は非常によくできています。

多少の噛み合わせの変化や姿勢の崩れがあっても、筋肉や関節、神経系が協調しながら、新しい状態へ適応しようとします。

そのため、多くの方は噛み合わせが変化しても、すぐに強い症状が現れるわけではありません。

しかし、適応していることと、影響がなくなったことは同じではありません

例えば、左右どちらかの足をかばって歩き続ければ、最初は身体が適応して普通に歩けるかもしれません。しかし、その状態が長く続けば、膝や股関節、腰など別の部位に負担が蓄積していくことがあります。

顎も同じです。

噛み合わせの変化に対して身体は適応しますが、その適応は、ときに首や肩、背骨、骨盤などへ負担を分散させながら成り立っている場合があります。

身体は「問題がない」のではなく、「問題が表面化しないように頑張っている」ことがあるのです

私も長年の臨床を通して大切にしているのは、この「適応」を読み取ることです。

症状が出ている場所だけを見るのではなく、身体がどのように補い、どのような代償を積み重ねて現在の状態になっているのかを丁寧に評価することが、根本原因に近づくためには欠かせないと考えています。

スポーツ選手が噛み合わせを大切にする理由

近年では、多くのトップアスリートが歯科医院で定期的に噛み合わせをチェックしたり、競技用マウスピースを活用したりしています。

その背景には、噛み合わせが口の中だけでなく、身体全体の安定性やパフォーマンスに関係する可能性があるという考え方があります。

もちろん、競技力は技術や筋力、体力、メンタルなど、さまざまな要素によって決まります。

しかし、身体の土台となる姿勢やバランスが安定していることは、どの競技においても重要な要素の一つです。

そのため、スポーツ歯学の分野でも、噛み合わせと身体機能との関係について多くの研究が行われています。

マウスピースと競技能力

競技用マウスピースは、歯や顎を外傷から守るだけではありません。

近年では、適切に調整されたマウスピースが咬合を安定させることで、筋活動や身体の安定性に良い影響を及ぼす可能性についても研究が進められています。

ただし、その効果には個人差があり、すべての競技者で競技能力が向上するとは限りません。

それでも、多くのトップアスリートが噛み合わせをコンディショニングの一つとして重視していることは、顎と全身のつながりを考えるうえで興味深い事実といえるでしょう。

身体の安定性との関係

人間の身体は、一つの部位だけで働いているわけではありません。

足裏から骨盤、脊柱、頭蓋骨、そして顎まで、それぞれが互いに影響し合いながら姿勢や身体のバランスを保っています。

噛み合わせが安定すると、頭部の位置や顎周囲の筋活動が安定し、その結果として身体全体が動きやすくなる場合があります

一方で、噛み合わせに左右差や不安定さがあると、それを補うために首や肩、体幹などが無意識のうちに代償することもあります。

もちろん、すべての不調や競技能力が噛み合わせだけで決まるわけではありません。

しかし、身体を一つのシステムとして考えると、顎もまた全身のバランスを構成する重要な要素の一つです。

当院では、顎だけを評価するのではなく、姿勢や脊柱、骨盤、神経系の働きまで含めて総合的に確認し、お一人おひとりの身体のバランスを大切にした施術を行っています。

30年以上の臨床で分かった顎関節の重要性

私は30年以上にわたり、腰痛や肩こり、頭痛、自律神経症状、顎関節症など、さまざまな症状の患者さんを診てきました。

その中で強く感じているのは、顎関節は単独で働く器官ではなく、全身のバランスと密接に関わっているということです。

もちろん、すべての症状が顎関節に原因があるわけではありません。

しかし、全身を丁寧に評価していくと、顎関節が身体のバランスに大きく影響しているケースは決して少なくありません。

顎関節を調整すると姿勢が変わるケース

臨床では、顎関節の動きや噛み合わせを調整した後に、立った姿勢や重心の位置、身体の動きが変化するケースがあります。

例えば、

  • 首や肩の力が抜けて立ちやすくなる
  • 背筋が自然に伸びる
  • 左右のバランスが整う
  • 身体の回旋や前屈・後屈がスムーズになる

といった変化がみられることがあります。

これは顎だけを治したというよりも、顎を含めた全身のバランスが整った結果として現れている変化だと考えています。

腰痛や肩こりの背景に顎関節が関係するケース

首こりや肩こり、腰痛などを主訴に来院された患者さんの顎関節を評価していると、顎を動かした際にクリック音(関節雑音)が認められる方に少なからず遭遇します

ご本人は「音が鳴るだけだから気にしていなかった」とおっしゃることも多く、顎関節症として治療を受けた経験がない方も少なくありません。

もちろん、クリック音がある方すべてに症状が現れるわけではなく、逆にクリック音がなくても顎関節に機能的な問題を抱えているケースもあります。

しかし、30年以上の臨床経験を通して、首こりや肩こり、腰痛などの患者さんを全身的に評価していくと、顎関節にも何らかの機能的な問題が認められるケースは決して珍しくないと感じています。

また、顎関節を調整した後に、首や肩の緊張が和らいだり、姿勢や身体の動きが変化したりするケースも少なくありません。一方で、顎関節だけを調整しても十分な改善が得られず、骨盤や脊柱、足部、自律神経、さらには心理的ストレスなど、別の要因へのアプローチが必要となるケースもあります。

このような経験から私は、顎関節は全身のバランスに大きく関わる重要な部位の一つですが、顎だけを見ればよいというものではないと考えています。そのため当院では、症状が現れている部位だけではなく、姿勢や脊柱、骨盤、頭蓋骨、神経系なども含め、身体全体を一つのシステムとして評価することを大切にしています。

逆に顎だけ調整しても改善しないケース

一方で、顎関節だけを調整しても十分な改善が得られないケースもあります。

そのような場合には、骨盤や脊柱、足部のバランス、自律神経の状態、さらには心理的ストレスや生活習慣など、別の要因が大きく関わっていることがあります。

つまり、顎関節は重要ですが、顎だけを見ればよいというものではありません

だからこそ当院では、顎だけを施術するのではなく、姿勢や脊柱、骨盤、頭蓋骨、神経系、さらにはストレスなども含め、身体全体を一つのシステムとして評価しています。

症状が出ている場所だけではなく、「なぜそこに負担が集中したのか」という背景まで考えることが、根本改善への近道だと考えているからです。

なぜ顎だけを診ても本当の原因は分からないのでしょうか

顎関節症は顎に症状が現れるため、「顎だけを診れば原因も分かる」と思われがちです。

しかし、日々の臨床で私が実感しているのは、症状が現れている場所と、本当の原因が存在する場所は必ずしも一致しないということです。

顎関節は、姿勢や脊柱、骨盤、筋肉、神経系などと密接に関わりながら働いています。

そのため、顎だけを詳しく調べても、なぜ顎関節に負担が集中したのかという背景までは見えてこないことがあります。

だからこそ当院では、顎だけではなく身体全体を一つのシステムとして評価することを大切にしています。

身体はすべてつながっている

人間の身体は、それぞれの部位が独立して存在しているわけではありません。

足部から膝、骨盤、背骨、頭蓋骨、そして顎関節まで、それぞれが互いに影響し合いながら姿勢や身体のバランスを保っています。

例えば、骨盤や頸椎の機能異常が顎関節へ負担を与えていることもあれば、顎関節の機能異常が首や肩、さらには腰の動きへ影響していることもあります。

身体を部分ではなく、一つのシステムとして捉えること。

これが当院の施術の基本となる考え方です。

キネシオロジー(筋肉反応検査)による全身評価

当院では、身体全体の状態を評価するために、キネシオロジー(筋肉反応検査)を活用しています。

筋肉反応検査は、筋力の強さを測る検査ではありません。

身体へさまざまな刺激を加え、その刺激に対して身体がどのように反応するかを確認しながら、全身のバランスや機能的な変化を評価していきます。

また、患者さんご自身では自覚していない身体からのサインを読み取るための手掛かりとしても活用しています。

この検査によって、顎関節だけを診ていては分からなかった全身のつながりが見えてくることも少なくありません。

全身を評価して初めて顎関節の役割が見えてくる

顎関節は、身体全体の中でも重要な役割を担う部位の一つです。

しかし、顎関節だけを調整すれば、すべての症状が改善するわけではありません。

実際の臨床では、骨盤や脊柱を調整することで顎の動きが改善することもあれば、逆に顎関節を調整することで姿勢や身体の使い方が変化することもあります。

さらに、自律神経の乱れや生活習慣、精神的ストレスなどが複雑に関与しているケースも少なくありません。

だからこそ当院では、顎だけを診るのではなく、姿勢や脊柱、骨盤、頭蓋骨、神経系なども含めて総合的に評価し、その方にとって本当に負担となっている要因を探していきます。

顎関節を診ることは、身体全体を診ること。

だからこそ当院では、その大切さを確信しています。

脳は全身を一つのネットワークとして制御しています

顎関節は、噛む・話す・飲み込むといった働きだけではなく、姿勢や首の動き、呼吸など、さまざまな身体機能と関わっています。

こうした全身とのつながりは、整体の臨床では以前から重視されてきましたが、近年の脳科学でも、身体を一つのシステムとして捉える考え方が注目されています。

もちろん、整体と脳科学は異なる学問分野です。しかし、「身体は部分の集合ではなく、一つのネットワークとして機能している」という視点には、興味深い共通点があります。

Nature誌で報告されたSCANとは

2023年、世界的な科学誌 Nature において、SCAN(Somato-Cognitive Action Network)という新しい脳のネットワークが報告されました。

従来は、運動野は身体の各部位を個別に制御していると考えられていました。しかし、この研究では、身体を動かすことだけではなく、姿勢の維持や全身の協調、行動計画、生理機能などに関わるネットワークの存在が示されました。

この研究は、「脳は身体を部位ごとではなく、全身を統合したシステムとして制御している可能性」を示す新しい知見として注目されています。

身体・姿勢・認知・自律神経を統合するネットワーク

私たちは、自分の意思だけで身体を動かしているように感じています。

しかし実際には、姿勢を保つこと、身体の位置を把握すること、周囲の状況を認識すること、生理機能を維持することなど、多くの働きが互いに連携しながら成り立っています。

東洋医学や整体では古くから、このような「心と身体は切り離せない」という心身一如の考え方が大切にされてきました。

SCAN研究は心身一如を証明したものではありません。しかし、身体を一つのネットワークとして捉える視点は、古くから受け継がれてきたこの考え方とも興味深く響き合うものがあります。

整体との共通点

整体でも、顎関節だけ、首だけ、腰だけを個別に診るのではなく、それぞれがどのように影響し合っているのかを全身から評価することを大切にしています。

もちろん、SCAN研究が整体の理論や施術効果を証明したわけではありません。

しかし、「身体全体を一つのシステムとして理解する」という視点は、私たちが日々の臨床で大切にしている考え方と重なる部分があります。

だからこそ当院では、顎関節だけに着目するのではなく、姿勢や脊柱、骨盤、頭蓋骨、神経系などを総合的に評価し、身体全体のバランスを踏まえた施術を行っています。

さらに臨床では、身体のバランスだけでは説明できず、心理的ストレスや過去の経験が症状の背景に関わっていると考えられるケースも少なくありません。

そのため当院では、必要に応じて身体だけではなく、心身の相互作用にも着目した評価と施術を行っています。

参考文献
Gordon EM, Chauvin RJ, Van AN, et al. A somato-cognitive action network alternates with effector regions in motor cortex. Nature. 2023;617:351–359. doi:10.1038/s41586-023-05964-2

谷井治療室では顎関節だけでなく全身を診ています

顎関節症は顎だけに原因があるとは限りません。

姿勢の崩れや骨盤・脊柱のバランス、頭蓋骨の動き、筋肉や筋膜の緊張、さらには神経系や心身のストレスなど、さまざまな要因が複雑に影響し合って症状が現れていることがあります。

そのため当院では、痛みのある顎関節だけを施術するのではなく、全身を一つのシステムとして評価することを大切にしています。

身体全体を多角的に評価します

症状の原因は、お一人おひとり異なります。

同じ「顎が痛い」「口が開けにくい」という症状であっても、骨格の問題が中心の方もいれば、姿勢のクセや身体の使い方、自律神経の乱れ、心理的ストレスが大きく関わっている方もいます。

そのため、一つの検査や一つの施術だけで、すべての患者さんに対応することはできません。

当院では、身体全体を総合的に評価し、その方にとって負担となっている要因を多角的に分析しています。

状態に合わせて複数の施術法を組み合わせます

評価結果に応じて、必要な施術法を組み合わせながら施術を行います。

例えば、

  • アクティベータ・メソッドでは、神経系への負担を抑えながら関節機能の改善を目指します。
  • オステオパシーでは、身体全体のつながりを重視し、組織の動きやバランスを評価します。
  • SOT(仙骨後頭骨テクニック)では、骨盤と頭蓋骨を含めた全身の協調性を整えていきます。
  • キネシオロジー(筋肉反応検査)では、身体の反応を確認しながら、症状の背景にある要因を探っていきます。
  • PCRT(心身条件反射療法)では、必要に応じて、心身の相互作用や脳に学習された反応パターンにも着目して施術を行います。

これらは、それぞれ独立した治療法ではなく、その方の状態を総合的に判断しながら活用するためのアプローチです。

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「局所」ではなく「全身」を診ることが大切です

顎関節症の症状が現れている場所は顎であっても、その背景には身体全体のバランスが関わっていることがあります。

だからこそ当院では、「痛い場所だけを施術する」のではなく、「なぜそこに負担が集中しているのか」という視点を大切にしています。

局所だけでは見えてこない原因を全身から丁寧に評価し、お一人おひとりに合わせた施術をご提案することが、谷井治療室の大きな特徴です。

まとめ

顎関節症というと、「顎だけの問題」と考えられがちです。

しかし実際には、姿勢や脊柱・骨盤のバランス、頭蓋骨、筋肉や筋膜、神経系、さらには心身の状態など、さまざまな要因が複雑に関わり合っていることがあります。

そのため、痛みのある顎だけを施術しても改善しないケースや、一時的に良くなっても再発を繰り返すケースも少なくありません。

当院では、顎関節だけではなく、身体全体を一つのシステムとして評価し、お一人おひとりの状態に合わせた施術を行っています。

顎関節症の背景にどのような要因があるのかを丁寧に見極めることが、根本改善への第一歩になると考えています。

顎関節は「噛むためだけの関節」ではなく、全身のバランスを支える重要な関節です

あわせてお読みください

顎関節と全身との関係について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのページもぜひご覧ください。

それぞれ異なる視点から顎関節と身体のつながりを解説していますので、あわせてご覧いただくことで、より理解を深めていただけます。

よくある質問(FAQ)

Q. 顎関節は本当に全身と関係しているのですか?


A.
はい。顎関節は頭蓋骨や頸椎だけでなく、姿勢や脊柱、骨盤などとも連動して働いています。

もちろん、すべての不調が顎関節だけで説明できるわけではありません。しかし、身体全体のバランスの変化が顎関節へ影響したり、逆に顎関節の状態が姿勢や身体の使い方に影響したりするケースは、臨床でも少なくありません。

そのため当院では、顎だけではなく全身を総合的に評価しています。

Q. 顎関節だけを治療すれば改善しますか?

A.
症状の原因によります。

顎関節そのものに問題がある場合もあれば、姿勢や首・肩・骨盤など全身のバランスが影響している場合もあります。

そのため、顎だけを施術するよりも、全身を評価したうえで原因に応じた施術を行うことが大切だと考えています。

Q. 姿勢を改善すると顎関節にも良い影響がありますか?

A.

姿勢が改善することで、顎関節への負担が軽減されることがあります。

頭の位置や首・肩のバランスは、下顎の動きにも影響するためです。

ただし、姿勢だけが原因とは限らないため、お一人おひとりの状態を総合的に評価することが重要です。

Q. ストレスと顎関節症は関係がありますか?

A.

ストレスが顎関節症の悪化要因となることがあります。

精神的な緊張が続くと、無意識の食いしばりや歯ぎしり、筋肉の過緊張などが起こり、顎関節へ負担がかかることがあります。

当院では、必要に応じて身体のバランスだけでなく、心身の相互作用にも着目しながら施術を行っています。

Q. 歯ぎしりや食いしばりも全身に影響しますか?

A.

歯ぎしりや食いしばりは、顎関節や咀嚼筋だけでなく、首や肩の筋肉に負担をかけることがあります。

また、長期間続くことで、姿勢や身体のバランスに影響を及ぼす可能性もあります。

詳しくは「ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)」のページで詳しく解説しています。

Q. 顎関節症は整体だけで改善できますか?

A.

症状や原因によって異なります。

整体が有効なケースもありますが、外傷や重度の関節疾患などでは、歯科や口腔外科など医療機関での検査・治療が必要な場合もあります。

当院では、まず全身の状態を丁寧に評価し、必要に応じて医療機関の受診をおすすめすることもあります。

料金

区分金額(税込)
初診料(初回のみ)3,300円
通常施術料7,700円
中学生以下3,850円

※施術時間は 約30〜45分(症状により前後します)
※完全予約制・当日予約も可能です
※お支払いは、現金かPayPayになります。

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札幌谷井治療室

〒064-0809 札幌市中央区南9条西4丁目3-15AMSタワー中島1503号室

TEL 011-211-4857

営業時間

月~金 9:30~19:30
日   9:30~17:00
定休日  水曜・土曜・祝祭日 

アクセス:地下鉄南北線 中島公園駅:徒歩1分