人の寿命を左右する決め手は「腎臓」にあります
今回ご紹介する書籍は「腎臓が寿命を決める」黒尾 誠著、幻冬舎新書から出版されています。
人体には様々なミネラルが存在します。その中でも「リン」の血中濃度が寿命に大きく関わることがわかりました。
- ネズミ・・・3年
- ウサギ・・・10年
- ヒツジ・・・20年
- ハダカデバネズミ・・・28年
- コウモリ・・・30年
- ゾウ・・・70年
- ヒト
上の図を見てわかることは、体の大きさと寿命には相関性がないということです。体のサイズの小さいハダカデバネズミは28年も生き、コウモリも30年も生きるものもいます。
それと体のサイズの割にとんでもなく長生きする動物の代表が私たち人間です。厚生労働省の「簡易生命表(令和4年)」によると、2022年の日本人の平均寿命は、男性が81.05歳、女性が87.09歳です。
いったいこれらの寿命を決めている要因は何なのでしょうか?
実は、生体内の「ある成分」がこれらの動物の寿命の長さに関係しているのではないかと取り沙汰されているのです。
その「ある成分」が「リン」です。
つまり、血液中のリンが少ない動物ほど寿命が長いということです。そのリンを体内から排泄して調整しているのが腎臓です。
なんと、腎臓には心臓が送り出す血液量の4分の1もの量が流れ込むのです。こんなにも血液をろ過する量が多い働き者の臓器なのです。
老化を早くするのも、遅くするのも様々な要因が関係しますが、その中で飛び切り大きな影響を及ぼしているのは、「体内の環境を一定に保つ力」です。この働きを「ホメオスタシス(恒常性維持)」と呼びます。
クロトー遺伝子はリンの排泄依頼を受け取るメールBOX
クロトー遺伝子とは、FGF23というリンを体外に出すためのホルモンのメッセージを受け取る受容体の役割をしており、「メールBOX」の役割をしています。
つまり、体内にリンが増えるとFGF23が分泌され、「もうこんなにリンは要らないから外へ出せ」というメッセージを腎臓に出し、それを受け取るのがクロトー遺伝子なのです。
クロトーとは、ギリシャ神話の中に運命をつかさどる3人の女神が出てくるのですが、そのうちの一人「生命の糸」を紡ぐ女神のクロトーにちなんで著者が命名したそうです。
老化が加速するかどうかは、「FGF23とクロトー遺伝子のリン制御システムが正常に機能しているかどうかが大切です。
ネフロンの数と年齢
腎臓は血液のろ過装置です。心臓が送り出す血液の4分の1が腎臓に流れ込んでいるのです。ネフロンは、糸球体と尿細管でできていて、その数は片方の腎臓だけで約100万個、ふたつで約200万個あるとされています。
ただこの数はあくまで平均値であり、少ない人だと腎臓ふたつで50万個、多い人だと腎臓ふたつで300万個。こうした数の開きが出る理由は、遺伝要因もさることながら、出生時の体重が関係すると言われています。
つまり、生まれたときの体重が重いほどネフロン数も多く、逆に低出生体重児はネフロン数が少ないという傾向があるようです。
それともうひとつ、意外に知られていないのが「ネフロンが消耗品である」という点です。ネフロンは加齢とともにじわじわと減少します。60代、70代になると、ネフロン数が20代の半分程度にまで減ってしまうのです。
さらに一度減ってしまったネフロンは、回復したり再生したりすることはありません。そして、実はこうしたネフロン数の減少に、リンの摂り過ぎが非常に大きく影響していることがわかってきたのです。
リンが老化を加速する
リンの一番大きな役割は骨を維持することです。今から約4億年前に硬骨魚類がリンを大量に体内に蓄えるようになり、その流れで我々陸上動物もリン酸カルシウムの丈夫な骨をもつようになりました。
しかし、体内に必要以上にリンが増えると「細胞毒」になったり「老化加速物質」になったりするのです。
骨以外の場所でのリン酸カルシウムの析出は、血液中のリンが過剰になると起こりやすくなります。リン酸カルシウムは、普段はタンパク質と結合してコロイド粒子のかたちで血中を移動しています。
そして、このリン酸カルシウムのコロイド粒子をCPPと呼びます。このCPPこそが私たちの身体に数々の健康被害を引き起こしている実行犯なのです。
このCPPを減らすことができれば、老化や病気に悩む多くの人が救われると考えられます。
腎臓は全ての臓器を管理するパソコンのOSのような存在です。私たちが毎日普通に生きられているのは、日々腎臓が体内状況を一定に保ち続けてくれているお陰です。
よく「多臓器不全」という言葉が使われますが、この多臓器不全は腎臓の機能低下が引き金になっているらしいということがわかってきました。
慢性腎臓病は国民の8人に1人の1300万人以上が罹っている国民病です。
この慢性腎臓病は、リンやCCP(リン酸カルシウムのコロイド粒子)を治療標的にすることで、かなりコントロール可能なのです。
リン酸カルシウムのコロイド粒子であるCPPの血中濃度が高まると、高リン血症となり、異所性骨化が起こります。これは、リンとカルシウムの結晶が血管や関節周囲などに溜まるもので、機械のサビ付きの様なもので、次のような症状につながります。
- 動脈硬化
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 関節の痛み
- 皮膚のかゆみ
また、私も臨床上、首の痛みや腰痛や背部痛などの患者さんの中に、稀に後縦靭帯骨化症や黄色靱帯骨化症の方がいますが、これなども異所性骨化の一つだと思います。
慢性腎臓病はリンが原因の早老病である
慢性腎臓病の経過を次に示します。
- 加齢によってネフロンの数が減ってくる。
- にもかかわらず、若い頃と同じような食生活を続けていると、ネフロン1本当たりのリン排泄量が増える。
- 尿細管が障害を受ける。
- 尿細管障害を起こしたネフロンが死に、更にネフロン数の減少が加速する。
- 腎臓のリン排泄力が低下し、血管石灰化や非感染性慢性炎症などのトラブルが起こるようになってくる。また、様々な不調や病気、老化現象に悩まされるようになる。
- ネフロン数が「残り5%程度」にまで減ると、食べた分のリンを排泄しきれなくなり、動脈硬化、心肥大、心臓病、脳血管障害などの発症リスクが高まる。
- 人工透析に移行→腎臓が働かなくなり、全く尿が出なくなる。透析で週3回(月・水・金)血液をきれいにしても、透析しない日は摂取したリンがそのまま体内に溜まっていくので、動脈硬化、心肥大、心臓病、脳血管障害、認知症、がんなどさまざまな病気に罹患するリスクが高くなり、命を縮めるケースも多くなる。
東洋医学の腎の考え方
東洋医学において「腎」とは、成長や発育、生殖、老化など生命の根本を司る力「精」を貯めておく五臓で、生命力の源と考えられています。西洋医学の腎臓だけでなく、泌尿器、生殖器系を意味し、先天の本(せんてんのほん)とよばれ、両親から受け継いだ精は腎に貯蔵され、生命の源となります。
「肝腎要(かんじんかなめ)」といい、肝臓と腎臓はとても大事なのです。腎臓は縁の下の力持ちの役目をしており、地味だけども大切な役割を担ってくれているのです。
「腎」の働きが低下したり不足している状態を「腎虚」といい、加齢とともに減少すると考えられています。
「腎」を温存するためには、睡眠不足や過労、精神の酷使などの負担をかけ過ぎないことです。
上の表は「五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)」というもので、五行(木・火・土・金・水)と万物との関係を表したものです。
これを知っていると、診断や治療の参考になるのです。「腎」は耳や骨や髪の毛と関係しており、これは西洋医学的にも符合するものです。腎経の気の衰えを「腎虚(じんきょ)」と呼びます。
腎気(じんき)は生命力を表し、成長や発育、生殖などに関わる生命エネルギーのことで、腎虚の症状は、以下になります。
- 腰痛や骨粗鬆症
- 脱毛や白髪
- 難聴や耳鳴り
- 皮膚の乾燥・痒み
- 排尿障害や尿失禁
- 下肢の冷えやだるさ
- 疲れやすく、根気が続かない
- 小さな文字が見えにくい
- つまずきやすい
- 手足が冷えやすい・・・など
腎が弱った人は、皮膚が黒っぽくなります。それも艶のない、くすんだ黒さなのです。
湯たんぽやカイロなどで、腰を温めることも腎の気を養う意味で有効ですので是非ご活用ください。
食とリンの関係
日本人のリンの食事摂取基準は、成人男性は1000mgで成人女性は800mgとしています。耐容上限量は18歳以上男女ともに3,000mgと設定されています。
とはいっても、一般生活者である我々は、何にどのくらいのリンが含まれているかなど考えながら食べているわけではないし、それぞれの食材に含まれるリンの吸収率も違いますので、これからわかりやすくご説明します。
私たちのネフロンは、歳をとるとともに減っていきます。歳をとったらリンの多い食べ物に気をつけることです。
過剰なリンを減らすことは最強のアンチエイジングです。それではまず、リンについて学びましょう。
リンの多い食べ物は、「肉」や「魚」、「乳製品」、「ラーメン」、「ファーストフード」、「スナック菓子」、「スーパーやコンビニのお惣菜」などです。
リンはタンパク質とともに存在しますので、たんぱく質の多い食材と、添加物として体に入ってくるリンがあります。
肉や魚などの食材に含まれるリンを「有機リン」とよび、食品添加物に含まれるリンを「無機リン」と呼びます。
有機リンの体内への吸収率は20~60%と食品によってかなり違いがあります。食品添加物として使用されている無機リンの吸収率は90%以上で、口から入った無機リンは、ほぼ全て吸収されてしまうと考えた方がいいでしょう。
因みに大豆に含まれる有機リンは、「フェチン酸」というかたちで含まれていて、人間の腸からは吸収されないので、リンのことはあまり気にしなくていいと思います。
昨今の筋トレブームで、プロテインも話題になっていますが、過剰摂取による腎臓への影響も危惧されていますのでご注意ください。
しかし、タンパク質の多い肉や魚などを減らしすぎることは、かえって健康を害することになりますので、ここでは食品添加物としてのリンを減らすことを考えて行きます。
食品添加物とリン
「リンが入っているかどうか」なんて細かく見てもどうせ分からないから、食品添加物が多そうな食品は、「どれも怪しい」「どれもリンが入っているかもしれない」と思って、できるだけ避けるようにする。
リンという相手は「味がない」「においもない」「見えない」からです。
こうやって食卓から意識的に食品添加物を遠ざけていくのが、最も効率的、合理的です。
「食は命」、命の源である食材を加工食品に頼るということは、他人に命を預けるということです。なるべく手抜きをしないで、自炊することが健康の一歩です。
食品添加物を減らしたい人のための12の心得を以下に示します。
- ハム、ソーセージ、ベーコンなどを減らす。
- 魚肉ソーセージ、かまぼこ、練り物などを減らす。
- なるべく「元の素材がわかる食品」を買う。
- カップ麺を減らす。
- とんでもなく日持ちがするものは買わない。
- 「いかにも着色料を使っていそうな食品」を買わない。
- スナック菓子は避ける。
- なるべく手作りのものを食べる。
- ファーストフードを食べる機会を減らす。
- 「下ゆで」「ゆでこぼし」などの工夫をする。
- 値段が安すぎるものには注意する。
- 食品消費ラベルを見て「○○料」「○○剤」という表記の多いものは買わない。
現代では普通の食生活を送っている人でも必要量の3倍相当のリンを摂取してしまっているのです。
運動とリン
宇宙の無重力環境では、筋肉量は地上の約2倍のスピードで減り、骨量に至っては、何と地上の約10倍のスピードで減っていきます。
JAXAが中心となって行われた「国際ベッドレスト研究」という有名な実験があります。別名「長期寝たきり実験」被験者に3か月間ベッドの上でほぼ寝たままの状態で過ごしてもらい、体にどの様な変化が現れるかを調べたものです。
この実験では、被験者の大腿骨の骨密度が1か月当たり2%以上減ったという結果が得られました。これにより、運動活動が極端に少ない生活を送っていると、宇宙と大して変わらないくらいのハイスピードで骨が衰えていってしまうことが判明したのです。
デスクワークが多い人ほど死亡率が高いという報告があります。つまり、運動量、活動量が少ない人は、骨に対する刺激が少なく、骨量低下とともに、リンやカルシウムを骨から溶け出させてしまい、骨粗しょう症や、慢性腎臓病を進行させてしまう可能性も高いのです。
30分に1回、2~3分でもいいから席を立って歩くようにすることをおすすめします。当たり前ですが「骨」は「動くため」に必要なのです。骨が弱ると身体も弱り、腎臓が衰えて、みるみる老化してしまいます。
最終的に行き着くのは「動くこと」と「食べること」
骨と腎臓が健やかに働いていないと、健康を保てません。「動くこと」は骨には不可欠で、「食べること」は腎臓と大きな関係があります。
つまり、「体をろくに動かさない生活」が骨や腎臓を弱らせるように働き、「食品添加物の多い食生活」が腎臓を弱らせるように働いてしまうのです。
金魚や熱帯魚などの観賞魚を飼育した方ならわかると思いますが、水槽の中の水を浄化するためにはポンプで水を循環させ、フィルターの中に常に水が流れているようにしなくてはなりません。まさしく流水腐らずですね。
現代生活は、「動くこと」と「食べること」がなおざりにされ、みすみす「骨」と「腎臓」を弱らせてしまう人が増えているのです。
腎臓は生命を守る臓器です。リンは老化と寿命を左右する物質です。この二つの重要性を知り、リンをコントロールし、腎臓の機能をキープしていくことが、わたしたちの生命を長く輝かせることにつながるのです。
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