大腰筋が原因の腰痛は筋緊張をゆるめること
大腰筋(だいようきん)は、お腹の奥にある深層筋(インナーマッスル)で体幹(背骨)と下肢(太ももの骨)をつなぐ唯一の筋肉です。股関節の屈曲や外旋の働きの他に、背骨を安定させる役目もあり、腰痛の原因にもなる大変重要な筋肉です。
当院の腰痛患者のほとんどにこの大腰筋の問題が関与しています。
大腰筋の筋力が低下したり、縮んで硬くなってしまうと、慢性的に「大腰筋のコリ」が持続し、その結果、姿勢が悪くなり、腰椎や骨盤、股関節の機能にアンバランスが生じます。
自分の大腰筋がどのような状態にあるか次のチェックリストを使って確認してください。
大腰筋のセルフチェック
大腰筋のコリや筋力低下があるかどうか、次の項目に当てはまるものをチェックしましょう。
- 反り腰で、仰向けに寝ると腰と床の間に手が入る
- 猫背である
- 歩く速度が遅い
- つまずきやすい
- 長時間の座り仕事である
- 長く寝ると腰が痛い
- 椅子に浅く座る癖がある
大腰筋の緊張が強いと腰椎を前方に引っ張ってしまうので反り腰になります。その結果、腰椎や骨盤の角度が変化し腰痛の原因になります。
反り腰の方は、ぎっくり腰や椎間板ヘルニアにもなりやすく、この様な方は大腰筋をゆるめることが大切になります。
また、腰椎の前弯が強くなると、更に胸椎の後湾が強くなりますので、猫背にもなりやすいのです。
そして、大腰筋に筋力低下があると歩くスピードが遅くなります。足を前方(股関節屈曲)に振り出すのに大腰筋が関与するためです。
長時間の座位の姿勢は股関節が屈曲した形が続くため、大腰筋が縮んだままになります。このような習慣が続くと慢性的に大腰筋が縮んで硬くなってしまうのです。
大腰筋とは

大腰筋とは背骨から太ももの骨である大腿骨の内側につながる筋肉で、股関節を屈曲し太ももを胸の方に引き付ける作用があります。この動きには腸骨筋(ちょうこつきん)という筋肉と共同して働きますので大腰筋と腸骨筋を合わせて「腸腰筋(ちょうようきん)」と呼ばれます。
ただし腸骨筋は、骨盤の内側から始まり、大腿骨までの筋の走行になりますので、背骨には付着していないので背骨の安定には直接的には関与していないのです。
また、小腰筋(しょうようきん)という筋肉も大腰筋や腸骨筋とともに股関節屈曲の働きがありますが、半数以下の人にしか存在しません。
大腰筋の2つの分類
大腰筋には2つの起始部があり、深層部と浅層部に分けられます。
起始 | 浅層部:第12胸椎(T12)、第1~第4腰椎(L1~4)の椎体と椎間板 深層部:腰椎1~5(L1~5)の肋骨突起 |
停止 | 大腿骨の小転子 |
支配神経 | 腰神経叢 |
作用 | 股関節の屈曲とわずかに外旋が主作用。その他に骨盤の前傾と脊柱のS字カーブの維持のため、腰椎の前弯をつくる。脊柱のみならず股関節の安定にも寄与している。 |
この様に重力下において、歩行や走る動作の中で、下肢を前に出すときに働く筋肉であり、その際に骨盤や腰椎の安定性にも貢献している大変重要な筋肉です。
この筋肉の発達と走るスピードとは関連があるといわれ、日本人よりも黒人の方が大腰筋の断面積が大きいことがわかっています。
歩行のスピードにも関連し、大腰筋の発達している人は歩くのが速く、逆に縮んでいたり筋力低下がある人は、歩くスピードが遅いのです。
大腰筋は股関節の屈曲位の維持に働き、腸骨筋は大腿の外旋にも働きます。

実際に人が運動するときには、様々な筋肉が共同して働くため大腰筋単体での運動ではないので、それらを総合的に考慮する必要がある。
例えば上部では、呼吸筋である横隔膜ともつながり、下部では下肢の筋群につながっています。呼吸や歩行など幅広く関与しているのです。
股関節屈曲に作用する筋肉
- 大腰筋
- 腸骨筋
- 大腿直筋
- 縫工筋
- 大腿筋膜張筋
- 中殿筋前部
- 股関節内転筋群
股関節屈曲の主な働きは大腰筋と腸骨筋が行い、その他の筋肉で補助するようになっています。これらの筋肉が共同して働いているということは、大腰筋に機能低下が起こると、これらの筋肉にもその影響が及ぶということです。
大腰筋のストレッチ
機能低下を起こしている大腰筋は、硬くなり縮んでいることが多く、このままでは姿勢が悪くなったり、歩いたり走ったりした際のバランスが悪くなります。その結果最終的には腰痛の原因になってしまうのです。
縮んだ大腰筋を改善する方法の一つにストレッチ体操があります。大腰筋のストレッチに効果的なポジションは股関節の伸展位をつくることです。ストレッチのやり方は以下に示します。
大腰筋ストレッチの効果
1.姿勢が良くなる
大腰筋は背骨と太ももの骨を繋ぐ唯一の筋肉で、この筋肉に柔軟性が増し正常に働くようになると、体幹がブレなくなり体のぐらつきが減ります。
2.歩行がスムーズになる
ストレッチにより大腰筋が緩むと、歩幅が広くなり歩く速度も速くなります。また、体幹が安定するので脚のパワーロスがなくなります。
3.つまずきや転倒予防
大腰筋が硬くなっていると、脚があまり上がらなくなり、つまずきやすくなります。更に体幹の安定性も悪くなるので、つまずいた際の体の揺動が大きくなり転びやすくなります。大腰筋がストレッチされゆるんでいると、歩行がスムーズになります。
4.腰痛の予防
大腰筋が硬くなる場合必ず左右差が出ます。より硬い側に体が傾き、更に腰椎の前弯や回旋が起こりこれらのアンバランスが元で、腰周辺のその他の筋肉にも左右差などが強く表れます。その結果、腰痛が起こます。デスクワークや長距離運転手など長時間の座位を強いられる方は、大腰筋が縮んでいますのでストレッチが必須です。
ランジストレッチ

上のイラストの様に、一歩前に出した足に体重を乗せ、後ろ側の足は伸びています。この後ろ足と同じ側の大腰筋が伸びていますので、15~30秒間この体勢を保持します。これを左右ともに2~3セット行います。
さらに大腰筋に強いストレッチをかけるためには、上のイラストの様に左足が後ろ脚の場合、左手を上に伸ばして体をやや右にねじるようにします。この時バランスを保つためには、右手で壁などにつかまっておくと安定してストレッチを行えます。
ひざ抱え込みストレッチ

大腰筋に過緊張がある場合、腰椎の前弯が増強し、腰仙角が大きくなります。その結果、背中側の脊柱起立筋が縮んだ状態になってしまいます。腰椎前弯の過剰は、椎体前面の前縦靱帯に負担がかかり、椎間板の後方がつぶれ、椎間孔が狭小化し、椎間板への剪断力増加と椎間関節への負荷の増大が起こります。
その結果腰痛が起こりやすくなります。上のイラストの様に、膝を抱え込んだストレッチを行うと背中側の筋肉が伸びますので、縮んだ脊柱起立筋が緩み腸腰筋との前後のバランスが整えられます。
筋肉には拮抗作用がありますので、前側の筋肉(大腰筋・腸骨筋)を緩めたら必ず後ろ側の筋肉(脊柱起立筋・臀筋)も緩めることが大切です!
大腰筋のトレーニング
大腰筋を鍛えるためには、股関節を屈曲させる運動が効果的です。一番イメージしやすいのが、スキップです。スッキップで太腿を上げる動作が大腰筋の収縮によるものです。
スキップはかなり運動量があり、できない人もいますので、まずは下のイラストの様に椅子に座った姿勢で太腿を上げる運動を繰り返すことで、効果的に大腰筋を鍛えることができます。

次にご紹介する大腰筋のトレーニングは、「バイシクルクランチ」です。この運動は複数の動作の複合運動のため強烈に負荷がかかります。その分正しく行うには難しい部分もありますが、是非トライしてみてください!
バイシクルクランチのやりかた
- 仰向けに寝る
- 両手で頭を支える
- 右ひざを胸に引き付けながら、左足はまっすぐ伸ばす。上半身を右ひざの方にひねり左肘と右ひざを引き付ける
- 反対側も同じく行い、自転車こぎの要領で交互に繰り返す。
- 左右で1回とし、これを8~15回位行えると理想的です。トータルで3セット行います。

この運動のポイントは、おへそを見ながら行うこと、呼吸を止めないで行うことで、肘と膝を近づけた体勢で2~3秒キープするとさらに効果的です。
トレーニング後は、大腰筋をよくストレッチしておくことを忘れないようにしてください!
大腰筋の重要性
大腰筋は重心に近い位置に存在するため、体のバランスを保つ上で大切な働きを行う筋肉となります。この位置は古来より下丹田(かたんでん)または、臍下丹田(せいかたんでん)と呼ばれ、臍(へそ)の下三寸(約9センチ)で、東洋医学における関元穴に相当する位置になります。

聖中心道肥田式強健術の肥田春充(ひだはるみち)先生は、「腰腹同量正中心の鍛錬」の重要性を唱えておりました。
腸腰筋と脊柱起立筋は脊柱を前後から支えています。お腹側と背中側の張力が同量であるとよいバランスだということです。東洋思想でも陰陽の考えがあり、陰陽が調和し中庸になることが大切とされています。
大腰筋が縮んだり筋力低下を起こすと、前後のバランス、陰陽のバランスが崩れ腰痛が発生しやすくなります。
大腰筋はこれらのバランスの要となる大切な筋肉なのです。
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