日本のアレルギー

私が生まれ育った昭和40年代には、日本では「アレルギー」は、ほとんどありませんでしたが、現在では国民の2人に1人が何らかのアレルギーを持っているといわれます。(出典:厚生労働省

社会構造と食生活の急激な変化が「アレルギー」の増加と密接に関係があると考えられます。

今回ご紹介する書籍は、「知らないと怖い食物アレルギー」松延 正之著、河出書房新社より出版されています。

アレルギーとは

アレルギー反応とは、人間を外界の異物から守るシステムです。体内に侵入した物質を、異物か、そうでないかを識別し、異物であれば効率よく破壊・排除する防御能力です。

その仕組みの一つに、「抗原抗体反応」というものがあります。体の中に入ってきたものを異物(体に合わないもの)として認識すると、生体はその異物に対して「抗体」をつくります。

この抗体が病気にならないように体を守っているのです。

体に抗体をつくらせるものを「抗原」と呼び、両者の反応を抗原抗体反応と言います。体に有益な抗原抗体反応を「免疫」と呼んでいます。

例えば一度、ハシカ(麻疹)にかかったら、一生、ハシカにかかることはありません。

ところが、この反応も生体に有益に働かない場合があります。20世紀の初め、ポリティエとリシェーはイソギンチャクの毒を研究中、二度目にイソギンチャクの毒を注射された犬がショック死したことから、アナフィラキシーという過敏反応を発見しました。

これは、抗原抗体反応のうち、特に過激な反応を起こす現象で、アレルギー反応の典型とも考えられています。

このように、抗原抗体反応が生体に不利に働くものを「アレルギー」と呼んでいるのです。

アナフィラキシーショック

蜂に刺されたり、食物アレルギーで死亡するケースは、アナフィラキシーショックによるものです。

シャルル・ロベール・リシェ、アレルギー研究の父
シャルル・ロベール・リシェ

アナフィラキシーとは、フランスの生理学者シャルル・リシェーによって提唱されたもので、抵抗(フィラキシー)の反対(アナ)という意味で名付けられました。

アナフィラキシーショックの症状としては、じんましん、顔面蒼白、全身の紅斑・紅潮、全身の浮腫(むくみ)、嘔吐、頭痛、血圧低下、意識混濁・意識消失など・・・

重症化しやすいのは、「即時型」とよばれるもので、多くは30分以内に症状が表れ、病院につく前に致死的な状況になることも少なくないのです。

アナフィラキシー・ショックによる死亡事例もありますので、注意が必要です。

因みに、アナフィラキシーが原因で心停止に至った例の、心停止までの平均時間は、薬物で5分、蜂毒が15分、食物では30分といわれます。食物は消化吸収に時間がかかるので、少し時間差があります。

お薬でのアナフィラキシーショックもありますので、一度具合の悪くなった薬は名前をしっかり覚えておく必要があります。

食物アレルギーの原因となる食品とは?

食物アレルギーによる事故を未然に防ぐように「アレルギー物質を含む食
品の表示」がより正確に行われるように厚生労働省も対応を進めています。

過去に何回か改定され、現在は以下の28品目になっています。

アレルギーの品目は、だんだん増えていますので、これからも増えることはあっても減ることはないと思います。

食物アレルギー28品目

神農

神農
神農

神農は医療と農耕の知識を古代の人々に広めた存在であると伝承されており、その名は最古の本草書『神農本草経』(しんのうほんぞうきょう)の書名にも冠され、医薬と農業を司る神として、日本でも湯島聖堂などに神農像が祀られています。

神農は、あらゆる植物を吟味して民衆に食用と毒草の違いなどを民衆に教えるため多くの植物をたべたので「神農は1日に70回も中毒した」といわれています。

現代では、神農の時代には無かった食材や食品添加物、農薬などの化学物質も存在し、何を食べ、何を食べてはいけないかの判断が大変難しくなっています。

食品添加物や農薬などの化学物質は、人類が初めて口にするものばかりですので注意が必要です。

まずは、できる限り自然で素性の知れた食材を選び、食品添加物の少ないものを自炊することです。

また、美食飽食を避けることです。特に食用油(オメガ6)と動物性たんぱく質の過剰は、アレルギー体質の下地をつくってしまいますのでご注意ください!

チャイニーズレストラン・シンドローム

アメリカ西海岸でのチャイニーズレストランで、食事をした後に頭痛や吐き気、しびれなどを訴える人が続々と出ました。

原因は「うま味調味料」と呼ばれるグルタミン酸ナトリウムでした。これは、「神経系アレルギー」といえます。

いわゆる「頭痛もち」の人や、異常に肩がこる人、温度に敏感な人(冷え性・暑がり)の要因の一つに食物アレルギーが隠れている可能性があります。

臨床上感じることは、アレルギーの患者さんは、首や肩などの筋肉が異常に緊張していることが多く、首や肩のこりを訴える患者さんが多いことです。

さらに神経系アレルギーの症状として「行動異常」があげられます。これをアレルギー性緊張弛緩症候群(ATFS)といいます。

じっとしていられない、落ち着きがない、休むことのないいたずら、乱暴な行動、衝動的な行動、怒りっぽい、イライラする、興奮しやすい、多弁、音や温度・光・においなどに敏感になったり、知覚、味覚・嗅覚が極端に鋭くなったりするのが「緊張症状」です。

一方、だるい、疲れやすい、無気力、いつも眠い、不活発、不精、鈍い動作、難聴などが「弛緩症状」です。

行動異常とアレルギーの関係

著者によると「内田クレペリン精神作業検査」を卵アレルギーの子供に行ったそうです。

最初は卵を二週間食べさせないで、落ち着いた精神状態のときに検査します。そうすると一分ごとに成績は上がり、とても集中できていることがわかります。

今度は、卵を食べてもらって行います。内容を見るとメチャクチャです。三分の一くらいが不正解でしたが、その原因はイライラして集中できないことにありました。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

ADHD(注意欠如・多動性障害)とアレルギーの関連性も指摘されています。落ち着きがない、怒りっぽい、突然変な声で叫ぶなどが同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められます。

ADHDは、脳の機能障害などと考えられていますが、まだ全てが解明したわけではありません。

すべてそうだとは断言できませんが、抗原食物や化学物質などが脳に作用して神経系アレルギーを起こし、その結果「異常行動」につながっているというのも大きな要素の一つと思われます。

以前、当院に来ていた小学生の男の子は、市販のお菓子や農薬を使った野菜や果物などを食べると、落ち着きが無くなるのです。

しかし、その子のお母さんが野菜を無農薬に変え、市販のお菓子を与えないようにしたら気持ちが落ち着き、行動も穏やかになりました。

稀に添加物の入ったお菓子などを食べたときには、情緒や行動がおかしくなるのですが、健全な食生活に戻すと、一週間ほどで元の落ち着きを取り戻すのです。

この事例から食べ物が心身に与える影響がかなり大きいことがわかります。

滅亡の3原則

民族、国家が滅亡する3つの原則があるそうです。

イギリスの歴史学者アーノルド・J・トインビーが提唱したとされる3原則とは次の通りです。

  1. 理想を失った民族は滅びる
  2. すべての価値を物やお金に置き換え、心の価値を見失った民族は滅びる
  3. 自国の歴史を忘れた民族は滅びる

ここからさらに発展させて、「その国の伝統食を失った民族は滅びる」ともとれます。

アレルギーは体からのメッセージです。砂糖、油、たんぱく質、食品添加物の過剰な現代食生活を改め、もう少し伝統食を見直すことが必要だと思います。

食品添加物

自然界の中でみれば、食べ物以外の農薬とか添加物が化学物質です。この化学物質に悩む人が年々、増加していると著者は指摘しています。

1947年(昭和22年)に、食品添加物の指定がされたとき、指定品目は66品目でしたが、2021年(令和3年)には829品目に増えています。

食品表示を良くチェックし、添加物の少ないものを選びましょう。

ただし、食品表示にも抜け道が多く、それだけを信頼するわけにはいきません。まずは自分の便の状態を良くチェックし、特定のものを食べるとお腹がゆるくなるなどの症状があれば、アレルギーを疑ってもいいと思います。

豊かな生活と果物アレルギー

私が子供の頃の昭和40年代と比べ、今の日本人は果物の摂取量も食べている種類も全く違ってきています。

果物アレルギーは、口腔アレルギー症候群(OAS=oral allergy syndrome)を起こすことが多く、唇が腫れる、のどがムズムズする程度から、喉頭の浮腫を起こして窒息するなどの重症化するケースもあります。

果物アレルギーの原因物質(アレルゲン)は、果物内のタンパク質です。これは小腸に到達する前に壊れてしまうので、主に口の中だけで反応が起こるのです。

果物アレルギーも、単に生活が豊かになって果物を食べる機会が増えたからとは言えないのです。

私の知人に無農薬でイチゴを栽培している人がいます。その方曰く、イチゴアレルギーの人でもそのイチゴは食べられるのだそうです。

またもう一つの話では、沖縄の糸満に無農薬でマンゴーをつくっている方がおります。知人でマンゴーを食べると、アレルギーで唇が腫れてしまう方がいますが、その無農薬マンゴーは食べても大丈夫なのです。

これらの事例から、食物アレルギーは、農薬や化学肥料などとの関連もあるのではないかと考えられます。

花粉症も純粋に花粉だけならまだアレルギー反応が起こらなくても、排気ガスなどの大気中の化学物質などと結びつくと、アレルゲンとして反応することも考えられています。

花粉症との関連

果物アレルギーの人は、花粉症にもなっていることがあります。果物と花粉のアレルゲンの構造が似ているため反応してしまうのです。

これを「交差反応」と呼びます。

主な花粉と交差反応が報告されている果物・野菜

花粉果物・野菜
スギトマト
シラカンバリンゴ、モモ、サクランボ、梨、ビワ、豆乳など
イネ科トマト、スイカ、メロン、オレンジ、キウイ
ヨモギセロリ、にんじん、ゴボウなど

ブタクサ
メロン、スイカなど

アレルゲンのタンパク質は熱に弱いため、加熱調理したものは食べられることもあります。

生の果物はダメだが、缶詰なら食べられるのはそのためです。

ドライアイと乾燥肌

アレルギーというのは、涙腺や汗腺、唾液腺などの「腺」を一つのターゲットにしています。

ドライアイ、乾燥肌、主婦湿疹などもアレルギーの可能性が高い。逆に、多汗という汗かきもアレルギー症状の特徴の一つです。

手のひらや、足の裏、それから体全体にたくさん汗をかくという人は、いわゆる汗の分泌異常ですから、当然、アレルギー体質を持っていると思われます。

また、アレルギー体質特有の顔つきがあります。「アレルギー顔貌」といって、目の下にクマやシワができます。

また、アトピーや蕁麻疹で皮膚がかゆくなっているときには、実は皮膚だけでなく内臓もかゆくなっているとお考え下さい。アレルギーは全身に影響するのです。

子供の体質に大きく影響する母親の食生活

アレルギーには遺伝的な体質もありますが、妊娠中に母親が何を食べていたか、生まれてから離乳食に何を食べていたかによってもアレルギー体質がつくられてしまいます。

実はこうした要素の方が大きいと著者は述べています。

また、食べたもののタンパク質は全てきれいにアミノ酸に分解されるわけではないのです。多くはペプチドまでの分解で、さらにもう一つ大きいポリペプチドの形で腸管から吸収されてしまうこともあるのです。

そうするとこれが異物として認識され、母親がアレルギーを起こしたりします。このポリペプチドは、妊娠中の母親の胎盤を経由して胎児に移行することや、母乳に分泌されることが判明しています。

これは遺伝ではなく「食伝」と考えられます。よって、過剰なタンパク質を摂り過ぎないようにして、消化に負担にならないようにすることが大切です。

離乳食とアレルギー

現在これだけアレルギー患者が増えた理由の中で、忘れてならない点には、離乳食の開始時期が非常に早くなったこともあげられます。

たとえば、いま二ヶ月くらいで果汁を、また、三ヶ月くらいになると、どんどん離乳食を進めなさいという指導をするところがあります。これではアレルギーの子供を次から次へと増やしているようなものです。

著者が進める離乳食のやり方は、だいたい五か月前後に野菜スープ、次いで野菜のうらごしや重湯を、そして、七か月くらいから白身魚を与えるようにすればいいと述べています。

内臓や免疫が出来上がってくるのもゆっくりですので、すぐに大人が食べるものを与えないで、成長に合わせゆっくり育てましょう。

アレルギーとストレス

アレルギーは、ストレスが多いと症状も悪化しやすい傾向にあります。

また、アレルギーの人は食べるものが制限され、同じものばかり食べているのである意味で心身共に健康には良くありません。

アレルギーを治すための食事療法は、高血圧や動脈硬化、糖尿病などの、いわゆる生活習慣病にならないための食事でもあります。

しかし、これからの時代を健康に生きていくには、食べ物も大事ですが、精神的なゆとりも優先させられるような生活スタイルを築いていくこと、本当に人間らしい生活を送るためにはどうするかを考えることが大切です。

================================

肩こり・腰痛・坐骨神経痛・椎間板ヘルニア・ぎっくり腰・めまい・頭痛・脊柱管狭窄症・自律神経失調症・五十肩・膝の痛み、股関節の痛み等、様々な症状の根本原因を施術する整体治療院 。あん摩・マッサージ・指圧師の国家資格取得者「札幌 キネシオロジーの谷井治療室」です。

全国どこでも遠隔施術も承ります。https://www.taniithiryousitu.com/distant-healing/
札幌市営地下鉄中島公園駅から徒歩1分と好アクセスです。

ご予約は TEL: 011-211-4857 にお電話下さい。

腰痛や肩こりの改善なら札幌市の整体|国家資格あん摩マッサージ指圧師の谷井治療室トップページへ

北海道札幌市中央区南9条西4丁目3-15AMSタワー中島1503号室


健康と医療ランキング

にほんブログ村 健康ブログへ
にほんブログ村