運動と脳

運動は体だけでなく、脳を健全に整えます。

今回ご紹介する書籍は、「脳を鍛えるには運動しかない!」ジョンJ.レイティ著、NHK出版です。

まず、古代ギリシャの哲学者、プラトンの言葉をお伝えします。

プラトン

人生において成功するために、神は人にふたつの手段を与えた。

教育と運動である。

しかし、前者によって魂を鍛え、後者によって体を鍛えよ、ということではない。

その両方で、魂と体の両方を鍛えよ、というのが神の教えだ。

このふたつの手段によって、人は完璧な存在となる。

                        ━ プラトン ━

運動で爽快な気分になるのは、心臓から血液がさかんに送り出され脳がベストな状態になるからで、運動は脳を育てて良い状態に保つために大切なのです。

宇宙も地球も動き続けていて、それによって大気や海の水も循環し、その結果、地球上の生き物も生きていけるのです。

腰痛肩こりめまいなども身体を動かさないと症状が悪化することがわかっています。ぎっくり腰でも安静にするのではなく、適度に体を動かした方が治りが速いのです。

とは言っても、運動をするのは面倒ですし、辛い部分もあります。そして多くの人は、安易な道に流されてしまうのです。

イエス様は次のように述べています。

狭い門から入りなさい。滅びに通じる門は広く、その道も広々として、そこから入る者が多い。 しかし、命に通じる門はなんと狭く、その道も細いことか。それを見いだす者は少ない。

                             (マタイによる福音書 7:13-14)

体と脳と心の結びつき

うつの状態が長引くと脳の一部が委縮します。逆に運動をすれば神経化学物質や成長因子が次々に放出されて、このプロセスを逆行させ、脳の基礎構造を物理的に強くできる。

運動が脳を鍛えるということで、その運動の基本は歩くことになります。お釈迦さまも、モーセも、イエス様も皆よく歩いた方々です。

2000年10月「ニューヨーク・タイムズ」紙はデューク大学の研究者が、うつ病の治療には、運動が有効で、塩酸セルトラリン(SSRIの一種。商品名:ゾロフト)に匹敵する効果があることを証明したのです。

この様に運動はほとんどの精神の問題にとって最高の治療法になります。すなわち、脳の栄養は運動による刺激なのです。

体育教師は授業で筋肉だけでなく、脳細胞もつくり出していることになります。本来の体育教師の仕事は、子供たちが健康でい続けるために、知っていなければいけないことを全て、彼らに教えることなのです。

しかし、今では競争や競技の記録や勝ち負けに偏り過ぎていると思います。

脳の可塑性

脳がどのように働いているか、そして、運動がどのように脳の質を向上させて最高の力を発揮させるかを理解するには、その可塑性について知ることが欠かせません。

私たちの行動や思考や感情は全て、脳細胞、つまりニューロンどうしのつながり方によった決まる。さらに、わたしたちの思考や行動や環境がニューロンのつながり方にフィードバックし、それを変えていく。

脳の配線は、かつて科学者たちが考えたように固定されているのではなく、絶えずつなぎ直されているのです。

脳内神経伝達物質

運動は脳の中の神経伝達物質、神経化学物質のバランスを保っている。BDNF(脳由来神経栄養因子)と呼ばれる物質は、ニューロンの回路、脳のインフラを構築し、維持している。

思考と感情と運動を生物学的に結びつけるうえで欠かせない。

運動や食事制限によって次のような修復分子が多く分泌される。

  • 脳由来神経栄養因子(BDNF)
  • インスリン様成長因子(IGF-1)
  • 線維芽細胞成長因子(FGF-2)
  • 血管内皮成長因子(VEGF)

脳のストレス耐性を強める手段として運動が望ましいのは、それがほかのどんな刺激よりはるかに多く増やすからです。

FGF-2とVEGFは、脳内で生成されるだけでなく、筋肉の収縮によっても生成され、血流によって脳に運ばれ、更にニューロンを支援する。

認知機能に与える3つの要因

  1. 教育
  2. 自己効力感(ある行動や課題を達成できるという信念や自信)
  3. 運動

学習と記憶の能力は、祖先たちが食糧を見つけるときに頼った運動機能とともに進化したので、脳にしてみれば、体が動かないのであれば、学習する必要は全くないと判断してしまう。

脳を刺激するには、規則的なリズムの運動と、不規則なリズムの運動を組み合わせるのが効果的です。

私たちの祖先の「運動量」を計算すると、現代人の運動量は石器時代の祖先に比べて38%も少ない。それなのにカロリー摂取量は大幅に増えている。

人の心は贅沢を望み、その反面、体は倹約家なので、カロリーをため込む。

人間は、限られた資源を巡って競い合う過程で、脳を進化させてきた。適度なストレスが脳を強くする。

ストレスと回復

1980年代に米国エネルギー省の指揮のもと継続的被曝が健康にもたらす影響について調査が行われた。メリーランド州ボルティモアの原子力造船所ではたらく労働者、二グループを比較した。驚くべき結果が出た。

被曝によって労働者はより健康になっていたのだ。放射線にさらされていた2万8千人の労働者は、そうでない3万2千人の労働者に比べて、死亡率が24%低かった。

放射線は細胞を傷つけるストレスであり、高レベルになると、がんなどの病気を引き起こす。だが、この労働者たちの場合、被曝した放射線量が少なかったため、細胞は死ぬどころか逆に強くなったのだ。

体にいい野菜

野菜や果物といった植物に含まれる体にいい化学物質の多くは、昆虫などに食べられないようにするための毒として進化したものです。

ブロッコリーに含まれるスルフォラファンという物質は細胞のストレス反応を活性化させる。(制がん作用)

適応して成長するという人間の素晴らしい能力は、ストレスがなければ発揮されない。ちょっとばかり悪いものを我慢しないと、良いものは得られないのです。

ストレスの意味

ストレスが人間を鍛えるという話では、逆に苦難がおとずれる人は、その人がこれから大きな仕事を行う大事な人であるということなのです。孟子は次のような言葉を残しております。

孟子

天のまさに大任をこの人に降(くだ)さんとするや、必ずその心(しん)志(し)を苦しめ、その筋骨を労し、その体(たい)膚(ふ)を餓えしめ、その身を空乏(くうぼう)にし、行うことその為(な)さんとする所に払(ふつ)乱(らん)せしむ」      【告子(こくし)篇】

(訳)天上の神がある人物に重要な任務を与えようとしたときには、必ずその人の心を苦しめ、肉体を疲労させ、生活を困窮させ、やる事なす事すべてがカラ周りするような大苦境に陥れるものだ。

この様に逆境や試練などのストレスは、人の心と体を強くしますが、逆に怠惰で何もやる事がない人は、体も心も弱くしてしまうのです。

運動の効用

イギリスのリーズ・メトロポリタン大学の2004年の研究では、ジムでトレーニングしている従業員は生産性が高く、仕事をよりうまく処理できると感じていることが明らかになりました。

被験者となった210名の大半は、昼休みに45分から1時間のエアロビクスのクラスに参加し、残りの人は30分から1時間、ウェイトトレーニングをしたりヨガをしたりした。

  • 同僚と協力し合えたか?
  • 時間管理ができたか?
  • 締め切りが守れたか?

これらの質問に対して、回答者の65%が、運動した日には三項目すべてにおいて、いつもより良くできたと答えた。

もっと一般的な研究でも、運動がストレスがもたらす深刻な病気を撃退するという説を裏付けている。ストレスと運動不足という現代社会の二大特徴が、関節炎、慢性疲労症候群、結合組織炎、その他の自己免疫疾患に深く関与している。

ストレスを軽減すれば、それも運動によって軽減すれば、こうした病気からの回復を後押しできる。

また、運動によって免疫機能を大幅に改善可能性があります。運動不足の女性の方が乳がんのリスクが高く、体を良く動かす人は結腸がんにかかる確率が50%低い。さらに、65歳以上で運動をしている男性は、通常は死に至る進行性前立腺がんにかかる確率が70%低いとのデータもあります。

ストレスが多ければ多いほど、脳をスムーズに活動させるために、体を動かす必要があることを覚えておいてほしい。

そして、運動はプロザックやほかの抗うつ剤や抗不安剤と同じようによく効くのです。運動をすることで筋肉の緊張をほぐし、セロトニンとGABA(γ-アミノ酪酸)を増やします。

これにより不安な症状を改善するだけでなく、不安障害の特質を根本的に解消できるのです。運動はニューロン結合に必要なものをすべて供給する。

パニック障害

1997年にドイツの精神医学者、アンドレアス・ブロークスが、軽症のパニック障害の患者46人を10週間に及び3つのグループに分け実験した。

  1. 定期的に運動するグループ
  2. クロミプラミン(抗うつ薬)を毎日服用するグループ
  3. 毎日プラセボを摂取するグループ

この中で最終的には、運動グループの患者たちが最も不安値が低かった。不安やうつ、パニックなど精神不安があると人の記憶力は低下します。

運動で不安障害の50%以上が消える

昔は感情は心臓から生まれるもので、精神の病の治療は心臓から始めるべきと考えられていた。これが近年具体的に明かされています。

運動すると心筋から心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)が分泌され、血流に乗って脳まで送られ、海馬の受容体にくっついて、HPA系(視床下部-下垂体-副腎系:ストレッサーから生体を守る)の活動を調整する。ANPには鎮静効果があるのです。

30分間ランニングマシンで(無理のないペースで)歩かせたところ、ANPの濃度が大きく上昇し、同時に不安とパニックの感情が緩和しました。

運動と恐怖

運動が優れているのは、体と脳の両方に効果があることだ。

  1. 気をそらす・・・体を動かすと、不安から気をそらすことができる。運動の抗不安効果は長続きする。
  2. 筋肉の緊張をほぐす・・・「運動の鎮静効果」は1982年に、ハーバート・ヴリーズという研究者が、運動によって筋肉の電気的な緊張を緩和できることを明かした。
  3. 脳の資源をつくる・・・運動によってセロトニンとノルアドレナリンを瞬時に長期的に増加させられる。
    セロトニンは恐怖を抑える。ノルアドレナリンは、不安のサイクルを断つ。また、運動はGABAやBDNFを増やし、恐怖に変わる記憶を補強する。
  4. 別の結果があることを教える・・・不安障害は交感神経を活発にし、心拍数が上がり、呼吸が速くなる。
    有酸素運動をするとそれと同じ症状が出て、「すり替え」がおきて、これは体に望ましい症状であると教えこむことができる。
  5. 回路を作り替える・・・不安を感じても、あえて行動することで、情報は偏桃体の別の回路を通り、安全で好ましいと感じるようになる。
  6. 立ち直りが早くなる・・・運動により、不安やパニックはコントロールできるということを学べる。これを自己把握(セルフマスタリー)といい、自分にはそうする力があることに気づき、自身がつく。
  7. 自由になれる・・・人は身動きできなくすると不安が増す。恐怖があったら閉じこもるのではなく、あえて外に出て運動することで、安心を得ることができる。

運動と精神

1999年のデューク大学における研究で、運動の効果とSSRIの一種であるセルトラリン(ゾロフト)の効果を16週間にわたって比べた。そこで運動には薬と同じくらいの効果があると結論した。運動が脳の化学反応を変えてうつに対して効果を発揮するのです。

著者は、「運動は間違いなく抗うつ剤だ‼ いや、それ以上のものだ!」と述べています。

大人のADHD(注意欠如・多動症)で集中が途切れてしまう男性が、トレーニングを続けるうちに集中力が持続するようになったとの報告もあり、著者は運動することで、ADHDの薬を減らすこともできると述べています。

運動が不安やうつも緩和する。その結果、依存症に対してもよい結果が出るのです。

陽気な心は健康を良くし、陰気な心は骨を枯らす

                         (箴言17:22)

運動と認知症

運動補充療法として、2001年にケベック州ラヴァル大学のダニエル・ローリンが「神経学アーカイブス」誌に発表した研究は、熟年層の男女4615人を対象として、運動と精神活動の関係を五年間にわたって調査した。その結果、かなりの量の運動をしていると答えた65歳以上の女性は、それほど活発でない対照群(男女含む)に比べて認知症になる確率が50%低かった。

肥満の人は普通の人の2倍、認知症になりやすく、糖尿病の人は65%、コレステロール値が高いだけで43%も認知症の発症率が上がってしまうのです。

運動が体だけでなく、脳の老化を防ぐことができるので、良く歩いたり筋トレなども積極的に行うことをおすすめします。

世界の長寿村の特徴の一つにも、良く体を動かす生活習慣があげられています。

まとめ

健康的な生活を営むための三つの柱は、①食事、②運動、③知的活動で、これらは昔から変わりません。

脳のために何かをするということは、体を心臓病や糖尿病、がん、その他の病気から守ることにもなります。体と脳はつながっている。両方一緒に大切にすればいいのです!

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