心と病

感情の抑圧画像

病気とは、心が気づいていないストレスを身体が「ノー」と言ってくれている結果なのです!

今回ご紹介する書籍は、『身体が「ノー」と言うとき』ガボール・マテ著、日本教文社、です。

著者は、一般開業医および緩和ケア病棟の医師としての経験から、強皮症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、筋委縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、がんなどの深刻な疾患の患者に共通点があることに気づきました。

それは彼らが「ノー、嫌だ」と言えないこと、怒りなどのネガティブな感情を適正に表現することができず、心の奥底に抑圧された膨大な感情をため込んでいたということです。

実は、これらの病気だけでなく、腰痛肩こりなど今まで筋骨格系の問題ととらえられてきた症状も、抑圧された感情など心の問題が大きく関わっているということがわかっているのです。

現代医学

文明評論家のイヴァン・イリイチは次のように述べています。「医学が治癒や苦痛や死といった重要な現象について語ることができるのは、化学分析が陶器の美術的価値について語るのと同程度にすぎない」

プラシーボ効果

また、アメリカの心理学者ロス・バックが指摘しているように、現代の医療技術や科学としての薬学が出現するまで、医師は長い間「プラシーボ」効果に頼っていた。

そのために医師は、一人の患者に、その人自身の中に治癒をもたらす力があると確信させることが必要だった。

それを効果的に行うためには、医者は患者の言葉に耳をかたむけ、信頼関係を築かなければならない。そして自分の直感を信じることも必要だった。

医師たちは、もっぱら「客観的」な方法、科学技術にもとづく診断法「科学的な」治療法に頼るようになったことで、この様な資質を失ったと述べられています。

目に見えるものだけを信じる物質至上主義的な医療では、究極的には人間をモノとして扱ってしまうので、患者の心の働きやプラシーボ効果などが無視されてしまう。

精神神経免疫内分泌学

精神神経免疫内分泌学

これは、精神と神経系の両方が体の免疫系の防衛機能と密接に連携しているということを唱えている学問です。

また、さらに内分泌器官、つまりホルモンに関係する器官も全体としての身体反応に関わっているということで、「精神神経免疫内分泌学」と名付けた研究者もいます。

当然これには自律神経系も深くかかわっています。

「心身相関」とか「病は気から」などと人類が昔から知っていたのに残念ながら忘れ去られてしまっていたことに、今や科学的な根拠が与えられようとしているのです。

感情の抑圧

人は感情が抑圧されると、病気に対する体の防衛機能が活動できなくなる。

人間の体の中をめぐる血液やリンパ液などは常に循環しており、酸素や栄養素も循環し代謝し、やがて排泄されます。この流れを止めてしまうと病気になったり死んでしまったりするのは火を見るよりも明らかです。

しかし、感情のエネルギーは、目に見えたり手に触れることができないため、抑圧されてその流れが滞っても、自分では全く気づかず、ましてやそれが病気の原因になっているなどとは考えも及ばないでしょう。

様々な病気の中に、心の奥底に抑圧された感情がある。感情と生理作用との間につながりがあるのなら、患者にそれを知らせないことは、強力な武器を奪うことになります。

ソクラテス

西洋においても、心身を一つとする考え方は、全く新しいものというわけではない。プラトンの対話篇の中でソクラテスは、あるトラキア人の医師がギリシャ人の医師について批判した言葉を引用して次のように述べている。

これほど多くの病気の治し方をギリシャの医師たちが知らぬのには理由がある。彼らは全体を知らぬのだ。人の体を治すのに、心を身体と別物として扱うのは大きな間違いだ

今から2500年近く前にソクラテスはこの様に言っているのである。

確かに、ほぼ同時代を生きた古代ギリシャの医師ヒポクラテスは、それまでの宗教的、呪術的な医療から、合理的、科学的な医学体形をつくっていきました。その反面として患者の心の面が置き去りにされた感もあります。

悪性腫瘍を持つ患者の多くには、精神的、肉体的な苦痛や怒り、悲しみ、拒絶といった不快な感情を無意識に否認(抑圧)する傾向がある。

日本人は我慢を美徳とする教育を受けてきているので、その傾向が強いと思います。しかし、これが感情の抑圧につながると病気の温床になる恐れがあります。

多発性硬化症の発生に関わる可能性のある要素として、症例の90%近くで、症状が発生する前に患者は、「防衛システム」を脅かすようなトラウマ的な出来事を経験しているといわれます。

また、彼らは自らの適応能力の低さ、つまり、困難な状況への対処能力が低いことに対する無力感や挫折感が、さらにストレスを増やす結果になっている。

マーフィーの法則で有名なジョセフ・マーフィーも次のような言葉を述べています。

ジョセフ・マーフィー

感情をいつも抑圧していると肉体的な病気となってあらわれてきます。それはすぐに心の川に流してしまいなさい

潜在意識はあなたの精神の創造者であると同時に、肉体の創造者でもあります。あなたのいっさいの生理的活動は潜在意識がつかさどっているのです

この潜在意識とは、仏教でいう「阿頼耶識(あらやしき)」と考えてもいいでしょう。仏教では阿頼耶識が万象を想像したといっていますが、瞑想によってこの阿頼耶識と直接つながることができるのです。

瞑想とは、自分の健康と幸せをつくり出す方法なのです。

抑圧された精神的ストレスがなぜ体にダメージを与えるかといえば、それが持続的なダメージだからです。弱い刺激でもそれが常に働き続けると肉体も精神も蝕まれてしまいます。

最近よく耳にする言葉に「慢性炎症」があります。この恐ろしさは、微細な炎症であってもそれが持続してしまうと肉体に大きな影響を与えてしまうということです。

抑圧された感情は「心の慢性炎症」のようなものです。

健康には「習慣」が大切なキーワードになります。健康な人は健康的な習慣をもっています。習慣こそその人の個性の表れであり、また、人生観の表現でもあります。

病気がちな人は病気になる習慣をもっています。これは目に見えるものだけではなく、目に見えない心の癖のようなものも含まれます。

「たかが習慣・・・」とバカにしないで、自分の心の癖や抑圧された感情に気づくことが健康を左右する重要なカギになるのです。

ストレスとホルモン

視床下部―下垂体―副腎は、一連の機能の流れを形成する一つの軸と考えられる。

ストレス学説で有名なハンス・セリエの言うストレスの三大影響は以下のようになります。

  • 副腎の拡大
  • リンパ組織の縮小
  • 腸の潰瘍

これらは、それぞれ副腎に対するACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の亢進効果、免疫系に対するコルチゾール(糖質コルチコイド)の抑制効果、腸に対するコルチゾールの潰瘍発生効果によるものだった。

「精神神経免疫内分泌学」で述べられているように、ストレスがこれらに影響を与えることがわかっているのです。

心理学者のロス・バッグは、ストレスから自分を守るために感情コンピテンスの獲得が大切であると述べています。

感情コンピテンスとは、自分の感情や欲求に適切な方法で十分に対処する能力で、次のような内容になります。

  • ストレスを受けていると気づくための、自分の心の動きを感じ取る能力
  • 自分の要求を主張し、心の境界を守るために、感情を効果的に表現できる能力
  • 目の前の状況にふさわしい精神的な反応と、過去を引きずっているだけの反応とを見分ける能力
  • 本当に満たす必要のある、心からの要求に気づくこと、他者からの受容や承認を得るためにそうした要求を抑えつけてはいけない。

これらは病気から自分を守ったり、すでに病気にかかっている人が回復するために大切なのです。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)

著者は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、感情の抑圧によって起こると述べています。あるいは少なくとも促進されると考えられます。

また、何かに駆り立てられているような生活を送っている人、周囲から「いい人」と評価されている人がこの病気にかかりやすいと著者は述べています。

これはあたかも、「ノー」といえない人に対して、体が病気を通して「ノー」といってきているように感じます。

ALSと診断されながらも、その症状を克服しているように思われる人がいます。クリスティアーヌ・ノースラップ博士は、その著書「女性のからだ、女性の知恵」で、一つの例を報告している。

ALSのある女性は、毎日15分間鏡の前に座り、自分の体の一箇所を選んではそこを愛するということを続けた。するとからだのその部分が少しづつ「解凍」されていき、治癒したのだそうです。

人間の抑圧された感情の中で多くを占めるのが「愛されてこなかった」「もっと愛してほしかった」というものなのです。

愛情エネルギーの不足が体の不調の原因になっていることが多いので、自分で自分のことを愛してあげることで体も癒されていくのです。

感情と肉体

人間のホルモン系は、感情を経験し処理する脳の中枢と複雑につながり合っている。更に種々のホルモン分泌器官と脳の感情中枢は、免疫系および神経系とつながっている。

これらは、四つの個別のシステムではなく、一つのユニットとして働くスーパーシステムであり、全体として外部からの侵入物や体内の生理的状態の混乱から体を守る機能を果たしているのである。

どんなストレス刺激も、慢性的であろうと急性のものであろうと、このスーパーシステムのどれか一つにだけ作用することはあり得ない。一つに起こったことは全体に影響するのです。

今までの分類「免疫学、内分泌学、心理学、神経科学」という概念的な区分は過去の遺物で「精神神経免疫内分泌学」というのがふさわしいと著者は述べています。

脳、神経系、免疫器官と免疫細胞、内分泌腺は、いくつかの経路でつながっているのです。

また、内分泌腺から放出されるホルモンや、免疫細胞がつくり出す物質は、脳の活動に直接影響を与えます。

精神、神経、免疫、内分泌系のシステムの中心は、視床下部―下垂体―副腎を結ぶ軸である。精神的あるいは肉体的刺激は、この軸を通して脅威に対する身体反応を始動させる。

不安、葛藤、無力感、情報不足などの精神的要素は、最大のストレス刺激であり、視床下部―下垂体―副腎の軸を強力に活性化させる。

逆に、こうした精神的な要求が達成されれば、ストレス反応は終わる。

がんとストレス

怒りの抑圧、絶望感、無力感が病気を呼び寄せる。

子宮がんの定期健診で細胞塗抹標本に異常があったが、特に症状が出ていない健康な女性を対象にした研究がある。

研究者たちは塗抹標本の検査結果を知る前に75%近い確率で初期がんにかかっている人を当てることができた。

使ったのは彼女たちの精神状態を知るための質問票だけである。研究者たちは『無力感を抱く傾向』あるいは過去半年間に解消されないままの絶望感と挫折感をもった女性は最もがんにかかりやすいことを発見した。

その他の研究グループも、合理的―非感情的(怒りの抑圧)という性質と慢性的な絶望感という精神状態を基準に、1400人近くの被験者の中から、がんにかかりそうな人、がんで死亡しそうな人を予測した。

そして、10年後に結果を見ると、78%の確率で当たっていた。

抑圧、ノーといえないこと、自分の怒りに気づかないこと、この三つがある人は自分の感情が表現できない、自分の希望が無視される、やさしさに付け込まれるということになりやすい。

それが長年繰り返されるとホメオスタシスが崩れ、免疫系を乱すことになる。

ストレスと腸の病気

潰瘍性大腸炎の患者700人以上を対象にした研究では、患者の大部分は「脅迫的で神経質」という性格特性を持っている。

その性格には、潔癖、時間の正確さ、良心に対するこだわりが含まれている。また、感情を表に出さないこと、過度に観念的かつ知的であること、道徳や行動規範に対する厳格な態度もみられる。同様の性格特性は、クローン病患者にも当てはまる。

55%の法則

1997年カルガリーの消化器疾患専門家ノエル・ハーシュフィールド博士は「カナダ消化器疾患ジャーナル」誌に論文を発表しました。

炎症性腸疾患の治療薬の臨床治験では、約60%のプラシーボ(偽薬)効果がみられるが、麻酔薬では一貫して55%で、抗うつ薬の治験にも55%というプラシーボ効果の治験結果が見られ「55%の法則」として知られる。

これは、自分の体に対し自分が主導権をとり、治癒力を高めることで55%は解決できるということです。

根本治療と対症療法

治療を行うとき、患者のそれまでの生活体験を事実上無視してしまえば、医師は強力な治療手段を一つ失うことになる。そればかりか、最新の薬学上の奇跡に無防備に飛びつくようになるのです。

手っ取り早く結果だけを手に入れたいと考えるのはいつの世も同じで、基礎からしっかりと積み上げていくことの大切さを、仏教もキリスト教も伝えています。

仏のたとえ

金持ちではあるが愚かな人がいた。他人の家の三階づくりの高層が高くそびえて、美しいのを見てうらやましく思い、自分も金持ちなのだから、高層の家をつくろうと思った。

大工を呼んで建築を言いつけた。大工は承知して、まず基礎をつくり、二階を組み、それから三階に進もうとした。主人はこれを見て、もどかしそうに叫んだ。

「私の求めるのは土台ではない、一階でもない、二階でもない、三階の高楼(たかどの)だけだ。早くそれを作れ。」と。

愚かな者は、努め励むことを知らないで、ただ良い結果だけを求める。

しかし、土台のない三階はあり得ないように、努め励むことなくして、良い結果を得られるはずがない。

(仏教聖典:はげみ第一章、さとりへの道、第三節、仏のたとえより)

イエス様の教え

24「そこで、わたしのこれらの言葉を聞いて行う者は皆、岩の上に自分の家を建てた賢い人に似ている。 25雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。岩を土台としていたからである。 26わたしのこれらの言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている。 27雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、倒れて、その倒れ方がひどかった。」

(マタイによる福音書7章24~27節)

根本的解決

この様に盤石の基礎の上に健康も築かれるものですが、さらに仏教聖典の中に次のようなたとえがあります。

ある人が蜜を煮ているところへ親しい友が来たので、蜜をごちそうしようと思い、火にかけたまま扇であおぎ冷やそうとした。これと同じく、煩悩の火を消さないで、清涼のさとりの蜜を得ようとしても、ついには得られるはずはない。

(仏教聖典:はげみ第一章、さとりへの道、第三節、仏のたとえより)

病気も根本原因の心の問題を棚上げし、症状を繕うだけの対症療法だけを行っていても、なかなか結果が出ないものです。

家族システム論

アメリカの精神科医、故マレー・ボーエンが打ち立てた「家族システム論」によれば病気は単に一個人の生物学的問題ではない。各個人の生理機能は常に相互につながっているという考えです。

親子の人間関係は生涯を通じて生理機能の重要な調整役であり続ける。愛されて育つと人は病気になりずらいという報告があります。

それでは、親にあまり愛されなかった人はどうしたらよいのでしょうか。

実はそのような親も、子供のころに親からあまり愛されないで育っている可能性が高いのです。自分の親ばかりでなく、その親を育てた祖父母、そしてさらに前の世代にまでさかのぼっていったら、私たちはその連鎖をどう断ち切ればいいのか?

著者はまず、ある意味のネガティブ思考が必要だと述べています。現実を直視することを恐れて、目を閉じる見せかけだけのポジティブ思考では問題は解決しない。

自分の人生におけるネガティブな面を直視することから治癒への道は始まる。

そして、幼少時代からの思い込みにいかに影響されていたかということに気づき、いい人と思われたいがために、ノーと言えない自分を知り、少しずつ変わっていこうとすることが大切なのです。

世代を超えて受け継がれてきた目に見えないストレスの連鎖を自らの手で断ち切ることである。

心と排泄

人間のからだでは、血液やリンパ液などが常に循環しており、食べたものや飲んだものも消化、吸収、代謝、排泄などの動きがあります。

もし、血液循環が悪くなったり、食べたものが便秘などでうまく排泄されないと、病気になってしまいます。

心のエネルギーも、うまく循環していればいいのですが、抑圧された感情など、いわゆる心がこり固まった状態になると、それが肉体に悪い影響を与えます。

瞑想や内観などで自分の心の内を見つめることで、心にどのようなものが詰まっているかに気づくことが大切だと思います。

まとめ

自分の心の内に閉じ込めた抑圧した感情に気づくことが、主体的に自分の人生を生きることになることにつながると思います。

誰かのせい、国や政治や社会のせい、時代のせいなどと自分の健康の問題を外的な問題のせいにしても問題の解決にはならないのです。

お釈迦さまも次のように説かれています。

「他人の過失を探し求めて、つねに腹を立てている人は煩悩の汚れが増大する」(『法句経』)

ある種の病気は、心が気づいていないストレスを身体が「ノー」と言ってくれているのです。自分の内を正しく見つめていくことが大切だと思います。

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肩こり・腰痛・坐骨神経痛・椎間板ヘルニア・ぎっくり腰・めまい・頭痛・脊柱管狭窄症・自律神経失調症・五十肩・膝の痛み、股関節の痛み等、様々な症状の根本原因を施術する整体治療院 。あん摩・マッサージ・指圧師の国家資格取得者「札幌 キネシオロジーの谷井治療室」です。

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