技と感覚
私が治療の世界に入ったのは25歳の時で、かれこれ26年も前の話になります。その当時、カイロプラクティックの学校に入り、昼間は治療院に弟子入りして働き、夜は学校で学ぶという生活を送っていました。
皆様もカイロプラクティックといえば、骨をバキバキ鳴らす矯正というイメージがあると思います。私のお世話になった学校は、そのバキバキの技量がピカイチの学校でした。
学長の塩川満章(しおかわみつあき)先生は、戦後初の本場アメリカ帰りのカイロプラクターで、その技術と独特の雰囲気には、常に人を引き付ける魅力がありました。そして、もう一点付け加えれば、塩川先生は他人の悪口を決して言わない人で、プラス思考で、誰もが敬愛を込めて「ドクター」と呼んでいたのです。

私たち学生は、みんな熱き志を持って、カイロプラクティックの技術の習得に励んでいました。仕事が終わると、少しでも早く登校し、授業の始まる前の僅かな時間に矯正の練習をしたものです。
誰彼かまわずつかまえて、お互い矯正の練習をし、技を磨いていました。今思うとカイロプラクティックの虎の穴と言ったところです。とても懐かしく思います。
そんなある日のこと、スクール講師の方が、手にしびれを感じたので、T先生の治療を受けたが、全く変化が無く、あらためてK先生の治療を受けたところ、たちどころに良くなったと話していました。
「T先生はアジャスト(矯正)は上手いんだけど、症状は変化しないんだよなぁ~」
「やっぱり、K先生でないとダメだなぁ~」と言っていたのです。
そこにいた学生何人かは、単なる体験談だと受け流していましたが、私はそのコメントを聞いて、何か電気に打たれたような衝撃を感じたのを、今でも覚えています。
T先生は、K先生と比べてもアジャストのスピード、切れ、正確さなど遜色ない腕前で、いったいこの二人の差はなんだったのだろうと常に自問自答していました。しかし当時の私にはその理由はわかりませんでした。
自分が臨床家の立場になって、初めてその答えがわかったのです。
アジャスト(矯正)の上手い人は、往々にして自分の技に酔い、その技に溺れてしまうことがあります。治療の目的は、目の前の患者さんを如何にして良くするか、という事でなければなりませんが、技の上手い先生は、その技が上手く決まるかどうかに主眼が置かれているのです。
実際は、アジャストで矯正音がしなくても、骨の動いたときは、その感触が手に伝わるため術者に分かるのです。それでも、アジャストをするときには、うまく矯正音が鳴るかどうかが大きなポイントになります。
バキッ!と、きれいな矯正音がすると、術者はホッとし、そこで治療の目的が終了してしまいます。そして自ら悦に入り、それに満足してしまうのです。
また、技に意識が向き過ぎると、治療に対する踏み込みが甘くなり、治療の力がその技のところまでで止まってしまいます。その結果、技の先にある大切なところまでエネルギーが到達しないのです。よって、アジャスト(矯正)は上手く決まったのに、結果はついてこないという現象が起きてしまうのです。
皮肉にも、技が上手いが故に陥りやすい落とし穴なのです。
因みに、私はアジャストが下手クソだったので、技に溺れたくても溺れることさえできませんでした。(笑)
治るとは
そもそも我々治療家は何をもって、日々の治療の終了点とするのか。何をもって治ったと判断しているのか。素朴な疑問ながら、なかなか答えの見つからない問題です。
まず私が、日々の臨床で大切にしていることは、目の前の患者さんの良くなった姿をイメージすることです。
ある有名な治療家が、「治る患者と、治らない患者を見分けることができる者が一流の治療家である。」と言っていました。
また、60戦以上して無敗を誇る剣豪宮本武蔵は、勝てる条件の中で、勝てる相手を見極めて戦っていたと言われています。
凡人の私にはなかなか到達できない領域です。 私の中では、治る治らないなどと考えているよりも、目の前の患者さんに只々最善を尽くすのみです。 我々治療家は、治すといっても、実際に治しているわけではなく、治るためのきっかけや、環境づくりをさせていただくのが本来の仕事だと思っているからです。
治療と感性
私がカイロプラクティックを習っていた塩川スクールの関係者で、当時、四天王と称された名人がいました。そのうちの一人に、ものすごい感覚を持っている方がいたのです。ここではA名人とします。
ある日、A名人とはカーテンで仕切られた隣側で、別の先生が治療の練習をしていました。 A名人はカーテンの向こう側にいる別の先生の治療を、ヘッドピースのカチャンと落ちる音を聞いただけで、「今のは良いアジャスト」とか、「今度は悪いアジャスト」などと言っていました。
この業界に入ったばかりの私には、隣の先生の姿も見ないで、何でわかるのだろうと不思議でなりませんでしたが、あれから25年以上の月日が経ち、自分で臨床をしていく中で、「あ~そういう事だったのか」という感じがします。 私は決して名人ではありませんが、感性の大切さを教えて下さったA名人に感謝しております。
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