腸内細菌が脳に影響

今回ご紹介する書籍は、「腸内細菌の逆襲」、江田証(えだ あかし)著、幻冬舎新書より出版されています。

腸内細菌増殖症(SIBO)によって、下痢や便秘、腹部の張りだけでなく、全身の不調に悩まされている方が日本中で1700万人以上いると考えられています。

腸イラスト

腸内細菌の歴史は、42億年前の酸素を嫌う嫌気性菌たちです。腸をはじめとする消化管は、体内で最も進化した器官系で、自然界で最も古い器官で、なんと脳よりも前に存在していたのです。

実は、腸内細菌によってつくられる「4EPS (4-エチルフェニルサルフェート)」は尿毒症性毒素とも呼ばれ、自閉症にも関連すると考えられています。

「腸は第二の脳」と言われますが、生物の歴史から考えると「腸は第一の脳」となります。英語圏では、直感=Gut Feelingといいます。日本でも「虫の知らせ」「腹の虫がおさまらない」「虫の居所が悪い」などという言葉があるように、腸と脳は密接にかかわっているのです。

マウスの腸内細菌とストレスの実験

九州大学大学院医学研究院教授の須藤信行さんの研究チームが、2004年に腸内細菌がゼロの無菌マウスとビフィズス菌だけを持つマウスを使ってストレスに対する反応を調べました。

マウスを拘束して動けなくするとストレスがかかり、ストレスホルモンが分泌されます。ところが、マウスに前もって善玉菌を与えておくと、ストレスホルモンが分泌されにくくなることが判明しました。

逆に、無菌マウスはストレスをかけられると脳から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が増加して、副腎皮質を刺激し情緒不安定になったのです。

つまり、よい働きをする菌をとって腸内環境を整えておくと、ストレスに対する耐性が生まれるということです。これを人間に当てはめると、腸内環境を整えると、キレやすい、落ち込みやすいなどの性格が緩和する可能性があるというのです。

さらに、脳の発達にも腸内細菌が関わっていることが判明してきました。BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質があります。脳の海馬などに存在し、神経細胞を活性化し、その増殖を促す物質です。記憶力とも関係が深いとされています。

実験的にマウスの腸内細菌をなくしてしまうと、BDNFが発現しなくなるのです。この影響は情動をつかさどる偏桃体にも及びます。

これを人に当てはめれば、腸内細菌のバランスが悪くなると、記憶力が低下したり、無感動や無感情になったり、時にはキレやすくなる恐れがあるのです。

これは腸内細菌によるマインドコントロールと言ってもよいでしょう。

腸内細菌にマインドコントロールされている人間

腸内細菌と精神

ある種の自閉症(コミニュケーション能力に支障をきたす精神疾患の一種)には腸内細菌の乱れ(ディスバイオーシスと呼ぶ)が関係しています。そして、プロバイオティクスによって治療できることがわかってきました。

プロバイオティクスとは、医療的な効果を期待してとる乳酸菌などの微生物のことです。

ある薬剤をマウスに注射すると、自閉症と同じ症状のマウスをつくることができるそうです。自閉症モデルマウスは、腸内細菌が乱れていることがわかっています。マウスから生まれたマウスも、やはり自閉症の症状があらわれるのですが、子供のマウスに乳酸菌などのプロバイオティクスを投与すると、自閉症の症状が改善することがわかりました。

自閉症は、腸内細菌の異常が関係していると判明したのです。さらに自閉症モデルマウスを良く調べてみると、腸の細胞と細胞の間に隙間ががあり、ウイルスや細菌のつくり出す毒素の侵入を許してしまう腸(漏れる腸)であるとわかりました。

つまり病原体が簡単に体内に侵入してしまうのです。医学的には腸の粘膜の「透過性の亢進」と呼び、腸のバリア機能が壊れていることを意味します。

自閉症を含む軽度発達障害の子を持つ親のために」柿谷正期(かきたに まさき)著、にもCFGFダイエットによる自閉症への対処法が記されていました。CFGFとは、カゼインフリー、グルテンフリーのことで、小麦由来のグルテンと乳製品由来のカゼインを食生活から除去するものです。

これにより腸内細菌のバランスがよくなり腸内環境が整います。カゼインやグルテンのペプチドは脳を混乱させることが指摘されています。これらはヘロインやモルヒネと同様の働きがあり、脳でのGABA の働きを抑制し、ドーパミンの分泌を促すことがわかっています。

自閉症の症状に関与する要因は次のようなものです。

  • グルテン、カゼイン
  • カンジダ感染
  • 有害ミネラル
  • 栄養不良
  • 食物アレルギー
  • 腸内環境の悪化

これらは全て食生活と関係し、腸内フローラのバランスと密接につながっている問題です。自閉症は脳の機能障害だから治らないといっているドクターもいますが、食事や腸内環境を増悪因子として捉えることもできます。

Drラップによるアレルギー中和療法の治験DVDでも、各種アレルギーの子供たちがアレルゲンを体内に入れたときに異常行動を起こすことが示されていました。このように人間の情動は様々な物質によってコントロールされていることがわかります。

リーキーガット症候群

リーキーガット症候群

腸の透過性が亢進した状態をつくり出すのが、リーキーガット症候群(leaky gut syndrome:LGS)です。直訳すると腸(gut)が漏れる(leak)状態で、腸漏れ症候群となります。

腸には無数の絨毛が存在し、その表面を粘膜が覆っています。この粘膜が一種のバリア機能を果たし、細菌や毒素などの有害物質の侵入を防いでいます。

しかし、この粘膜に穴が開いてしまい、通常であれば体内に取り入れないウイルス、細菌、毒素などの有害物質の侵入を容易にしてしまうのです。

地球にもオゾン層があり、太陽からの有害な紫外線を防いでいます。このオゾン層に穴(オゾンホール)があくと有害な紫外線が降り注ぎ、皮膚がんや白内障の原因になったり、他の動植物やプランクトンなどにも悪影響を与えます。

地球のバリアも腸のバリアもどちらも有害なものを防ぐ役目があるのです。

リーキーガット症候群の原因

リーキーガット症候群の原因としては、次のようなものがあります。

  • 砂糖、食品添加物、の多いお菓子や加工食品
  • パンなどのグルテンの多い小麦製品
  • 牛乳(カゼイン)
  • 過食
  • 抗生物質、ステロイド剤やピルのような医薬品
  • 過度の飲酒
  • カフェイン
  • 生活習慣の乱れ(過労、寝不足など)
  • 過度なストレス

コンビニ食、加工食品、インスタント食品、お菓子、清涼飲料水(ブドウ糖化糖液糖などの異性化糖)などいわゆるジャンクフードと呼ばれるものは全て腸内環境を悪くしてしまいます。

小麦粉に含まれるグルテンは、腸内環境を悪化させ、リーキーガット症候群を起こし、各種アレルギー症状の原因となります。

砂糖などの過剰な糖質はカンジダ菌の餌になり、カンジダ菌が大量繁殖すると、腸の炎症を引き起こし、リーキーガット症候群を悪化させます。

消炎鎮痛剤や抗生物質、ステロイド剤などの医薬品の長期服用は善玉菌を殺し、悪玉菌の増殖を助長します。

手作りをしないで、出来上がった食べ物を買ってきて食べる習慣の人は、食品添加物や砂糖の過剰摂取になりやすく、リーキーガット症候群のリスクを高めます。

リーキーガット症候群の症状

腸のバリアが壊れた部分から有害物質が血中に入り全身に広がって、全身のあらゆる部分に慢性炎症を起こし、次のような疾患や症状をつくり出します。

腹痛、原因不明の発熱、便秘、下痢、お腹の張り、消化不良、食欲低下、吐き気、疲労感、集中力低下、記憶力低下、神経過敏、口臭、抜け毛、じんましん、喘息、アトピー性皮膚炎、クローン病、過敏性腸症候群、筋肉痛・関節痛、高血圧、糖尿病、慢性的にストレスを感じる、統合失調症やうつ病、自閉症など

腰痛膝痛股関節痛なども慢性炎症と深い関係があります。

リーキーガット症候群の治療

腸内環境は、食事や生活習慣の影響を受けるため、リーキーガット症候群の改善には、食事の内容や食べ方、生活習慣の見直しが必要です。いわゆる「腸活」「菌活」です。

腸内フローラのバランスを整えるために、まずは次のことを実践してください!

食物をよく噛んで食べる

早食いなどで、よく噛まないで食べると、消化が悪くなり腸に負担をかけリーキーガット症候群の原因となりますのでご注意ください。

また唾液には、自然界に存在する毒素を分解する作用があり、消化酵素も含まれていますので、ご飯はゆっくりよく噛んで食べることが大切です!

腸内環境を悪化させる食品や医薬品を控える

砂糖はカンジダ菌の餌となり、カンジダの増殖は腸粘膜を傷つける原因となります。

また、パンなどの小麦グルテンの多い食品も腸粘膜を傷つけますので避けることが望ましいのです。

消炎鎮痛剤や抗生物質の乱用など、不要な医薬品を減らすことも大切ですので、医師とご相談の上ご検討ください。

善玉菌を増やす食品やサプリメントの摂取

「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」という概念があります。プロバイオティクスとは、共生を意味するプロバイオシス(probiosis)からきており、プロ(pro:共に、~のために)とバイオシス(biosis:生きる)を語源としています。

1908年ノーベル生理学・医学賞を受賞した微生物学者イリヤ・イリイチ・メチニコフが、「長寿者の多いブルガリア人は、ヨーグルトをたくさん食べ、この乳酸菌が長寿の原因だ」との説を唱え、これがプロバイオティクスという概念の始まりとされています。

その後、イギリスの微生物学者Fuller(フラー)により、1989年にプロバイオティクスの定義が発表され今日に至っております。その定義は次のようなものです。

「腸内フローラ(腸内細菌叢)のバランスを改善し、宿主の健康に良い影響を与える生きた微生物」

因みに、抗生物質はアンチバイオティクス(Antibiotics)とよばれ、細菌を殺す薬で、抗菌薬とも呼ばれます。プロバイオティクスの共生とは全く逆の働きです。

「プレバイオティクス」とは、1995年イギリスの微生物学者Gibson(ギブソン)らにより提唱され、腸内フローラを健康的なバランスに改善、維持する食品成分のことを言います。

腸内環境を整えるのに有効な食品(プレバイオティクス)を積極的に摂取します。野菜、芋類、豆類、海藻、キノコ類、果物などの食品。(腸内細菌増殖症:SIBOに対しては、低FODMAP食が一時的に重要となりますが、ここでは一般的にリーキーガット症候群に焦点を当てた食材を示しています)

食物繊維は腸内細菌の餌になるだけでなく、便のかさを増やし腸を刺激しますので便秘の改善にも効果的に働きます。

うんちのお話

太平洋戦争のさなか、ある島で米軍が日本軍の露営地跡を調べました。米軍が上陸したとき日本の守備隊は森に隠れた。米軍は便所跡を調べ、どの程度の兵力がいたのかを推定した結果、そこには大量の便があったことから、相当数の日本軍の兵力があると判断し、恐れ、その場から撤退したそうです。

ところが、実は日本軍の兵力は多くはなかったのです。当時の日本兵の便の量は400g近くあったのに対し、米兵は150g程度で、これは現代の日本人と同じくらいです。米兵は自分たちの平均的排泄量をもとに計算をしたため、日本兵の便の量を過大評価してしまったというわけです。

この様に、昔の日本人は食事から多くの食物繊維を摂っていたことがわかります。ということは、腸内細菌のバランスもよく、ストレスにも強かったのだと推測されます。

よく旧日本軍の精神論や根性論を非難する論調がありますが、実は彼らは、現代人から見ると想像もできないほどの屈強な精神力を普段からもっていたのだと思います。そのために、今のような平和な時代の人から見れば、異常なほどの精神力と受け取られ、それがクローズアップされ過ぎたのだと思います。

昔の日本人の精神力の根源は、腸内環境にあったのだと私は思います。そこには強いだけでなく、例え敵であっても相手を憐れむ心、則ち惻隠の情をもった武士の情けというものであったのです。

この様に、和の心の涵養をもった、腹(肚)のできた人間をつくり出してきた要因のひとつが、我々のご先祖たちが食べてきた食べ物に起因する腸内環境にあったのではないでしょうか。

発酵食品

プロバイオティクスとしての働きを考えた食品としては、漬物、味噌、キムチ、納豆、ヨーグルトや乳酸菌飲料、などの発酵食品がそれにあたります。

サプリメント(乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌など)の摂取も大切ですが、自分のからだに合うものを選ぶことが大切です。

ストレスを溜めない

適度な運動と十分な睡眠は、ストレス解消には欠かせません。生活リズムにゆとりを持たせストレスを溜めない生き方が大切です。

まとめ

人間はだれしも自分一人で生きているのではなく、小さな生き物たちと共生し、生かされ生きているのです。

そして、宿主の脳を操り気分や行動まで変えてしまう微生物。病気や体質は「遺伝」の関与もささやかれますが、それだけでなく、代々どのような食生活を送ってきたかという「食伝」、そしてどのような微生物が家族間で伝えられてきたかという「菌伝」も含め考えて行く時代になったと思います。

根本的という言葉があります。根本とは「ねもと」のことです。腸は人間の根元であり、その良し悪しは、腸内細菌叢(腸内フローラ)によって決まります。腸内細菌は私たちの健康を守ってくれるかわりに、私たちも腸内細菌にその棲みかと食べ物を与えています。

腸内細菌のバランスが崩れることで、ヒトは肉体だけでなく心のバランスまで崩してしまいます。安定した精神状態の維持にも良質の腸内フローラが役立つのです。

腸内環境を健全に保てるように食生活を改善し、ストレスを溜めない生活習慣を送ることが病気の根本的な解決になると思うのです。

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